撮影が終わり、無事に現場を離れたからといって、プロの仕事が完了したわけではありません。
「撮った写真がすべて正しく取り込まれているか」――この確認こそが、納品までのすべての工程の土台になります。
とくに、メインカメラ・サブカメラの2台体制で撮影した場合、それぞれのカメラで撮影したショット数と、PCに取り込んだデータ枚数が完全に一致しているかをチェックすることは、最も重要なポイントです。
さらに、PCに取り込んだデータをAdobe Lightroom Classic(LrC)に読み込んだ後の枚数も、撮影枚数と照合し、「漏れなく取り込みできている状態」を必ず確認しておきましょう。
たった1カットの取りこぼしが、撮り直し不可能な現場では致命的なミスにつながります。
本記事では、そのリスクを防ぐための「カメラからPCへの取り込みワークフロー」を、ステップごとに解説していきます。
※ここではAdobe LrCで写真編集を行う前提で記事を書いています。別のツールで写真編集を行う方は、ご自身で使用する編集ツールに読み替えて記事をお読みください。
撮影が終わってホッと一息…でも、データはまだ“無防備”です。
現場での撮影を終えたあと、カメラマンに残された最も重要な仕事のひとつが、
「データをその日のうちにPCに取り込む」こと。
です。どんなに完璧な写真を撮っていても、そのデータが失われてしまえばすべてが無意味です。
トラブルは予告なく起こります。だからこそ、撮影後のデータ取り込みは“できるだけ早く”が鉄則です。
帰宅後すぐに撮影データをPCにコピーします。
カメラからカードを抜く前にカメラの電源を切り、PCに接続したカードリーダーにメモリーカードを挿入し、「OS標準のファイル管理ツールを使って」メモリーカード上の撮影フォルダをPCへコピーします。
例えば、Nikon Z9、Nikon Z8の2台のカメラを使って撮影し、カメラのカスタムセッティング2つずつを使って撮影した場合次のようなフォルダに撮影データが含まれます。
111NCZ_9
159NCZ_9
138NCZ_8
148NCZ_8
PC上のどのフォルダ内にデータをコピーするかは、ご自身で決めて置くと日々のワークフローがシンプルでミスの発生も少なくなるでしょう。
ファイル編集ソフトAdobe Lrcや、Nikon NX Studioなどの写真ビュアー上にもメモリカードからPCへ取り込む機能が付いていますが、確実にデータをもれなくPCにコピーするために「OS標準のファイル管理ツール」を使用してカメラからPCへデータをコピーすることを強くおすすめします。
ちゃんとコピーしたはず…」なのに、データが足りない!?
ある日、筆者が実際に体験した出来事です。
撮影後のデータを、Nikon純正の画像ビュアーソフト「NX Studio」を使って、「新しく撮影したデータのみを自動的にコピー」する設定でPCに取り込んだところ、
後で確認すると、途中のデータが一部抜け落ちていることに気づきました。 あわててNikonのサポートに連絡したところ、次のような説明を受けました。
「PC上にあるNX Studioのデータベース情報が破損している可能性があります。一度キャッシュを削除してからコピーし直してください」
つまり、ソフト内のデータベースやキャッシュの不具合により、本来コピーされるはずの写真がスキップされてしまっていたのです。
写真管理ソフトには「撮影日ごとに整理」「重複ファイルのスキップ」「新しく撮影したデータのみを転送」「転送時に自動的にファイル名を変更する」など便利な機能が多く備わっています。
しかし同時に、そのソフト固有のバグや不具合、設定ミスによる“見えないリスク”も存在します。
そして何より怖いのが、コピーに失敗していても気づかないことがあるという点です。
たとえば、自動転送機能でデータを取り込んだと思い込んでメモリーカードをフォーマットしてしまった場合、 二度と取り戻せないデータが消えてしまうリスクがあります。
プロカメラマンにとって、写真データは何よりも大切な“成果物”です。
納品後のトラブルや信用低下を避けるためにも、「便利さ」よりも「確実さ」を優先する意識が必要です。
実際に撮影したショット数と、PC上にコピーされた写真データの数が同一であることをカメラごとに確認します。
111NCZ_9
159NCZ_9
138NCZ_8
148NCZ_8
というフォルダをカメラからPC上に取り込んだ場合、
111NCZ_9
159NCZ_9
の2つのフォルダにNikon Z9で撮影した写真データが含まれます。
138NCZ_8
148NCZ_8
の2つのフォルダにNikon Z8で撮影した写真データが含まれます。
ニコンのカメラで、「電池チェック」メニューを表示すると、次のような画面が表示されます。今カメラに入っているバッテリーで何枚撮影したか、そのバッテリー残量は何%あるかを確認することができます。
Nikon Z8、撮影後に表示した電池チェックメニュー。バッテリー1本で3866枚撮影して残容量は26%(筆者撮影)
筆者は過去の電池チェックメニューで確認したショット数、電池残量をすべてエクセルで管理しており、撮影イベント別に過去にさかのぼってショット数や電池残量(100%換算撮影可能枚数)を確認することができます。
撮影時にバッテリー交換を行った場合は、使用したバッテリーをカメラに挿入すると、そのバッテリーを使った撮影ショット数とそのバッテリーのバッテリー残量がわかりますので、その日使用したすべてのバッテリーの撮影枚数を集計して、
各カメラ毎の総撮影ショット数と写真データ数が同一であること
すべてのカメラの撮影ショット数と、取り込んだ写真データの総数が同一であること
を確認します。
バッテリーで確認できる撮影ショット数と写真データ数の値が1でも異なる場合はデータの取り込み漏れや、その日撮影した以外のデータが含まれている可能性があるので再確認を行います。
例えば、次のような時にショット数と写真データ数が異なることがあります。
撮影ショット数>写真データ数の場合
撮影ショット数<写真データ数の場合
撮影ショット数=写真データ数の場合
(ニコンカメラの場合)カメラのメニューから、記録フォルダ番号を変更(1数字を大きく)することにより、写真データのファイル名連番が0001から割り当てられます。
撮影日ごとに記録フォルダ番号を変更することにより、ファイル名連番が0001から始まるので、(Nikonカメラの場合)そのカスタムメニュー毎の撮影連番がわかりこの後のファイル整理・管理がやりやすくなります。
カメラからPCに取り込んだ直後の写真データのファイル名は、
Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG
のように「[3桁文字]_[4桁連番」.JPG」のようなシンプルなファイル名になってます(RAWデータの場合、ニコンカメラでは、「.NEF」という拡張子になります)。
上記ファイル名の左側の3文字(上記例では[Z9A]の部分)は、あらかじめカメラのメニューから、(ニコンカメラの場合)カスタムメニュー番号別に好きな文字列3文字を割り当てることができます。この3文字を使用するカメラすべてで、カメラ別、カスタムメニュー別にすべて異なる3文字にあらかじめ設定しておくことをおすすめします。筆者の場合、次の設定にしています。
Nikon Z9のカスタムメニューA ⇒ [Z9A]
Nikon Z9のカスタムメニューB ⇒ [Z9B]
Nikon Z9のカスタムメニューC ⇒ [Z9C]
Nikon Z9のカスタムメニューD ⇒ [Z9D]
Nikon Z8のカスタムメニューA ⇒ [Z8A]
Nikon Z8のカスタムメニューB ⇒ [Z8B]
Nikon Z8のカスタムメニューC ⇒ [Z8C]
Nikon Z8のカスタムメニューD ⇒ [Z8D]
Nikon Z6iiの通常設定 ⇒ [Z6A]
Nikon Z6iiのカスタム1 ⇒ [Z6B]
Nikon Z6iiのカスタム2 ⇒ [Z6C]
Nikon Z6iiのカスタム3 ⇒ [Z6D]
あらかじめ、上記のように全てのカメラのすべてのカスタムメニューで3文字をユニークな文字にしておくことにより、ファイル名を見ただけでどのカメラのどのカスタムメニューで設定したかがわかり、カメラの不具合やカスタムメニューの設定不具合の原因を調べる際に役立ちます。
カメラからPCに読み込んだファイルの数が撮影ショット数と一致することが確認できたら、次にファイル名に「撮影日+連番」を加えます。
例えば、カメラからPCに写真データを取り込んだ直後のファイル名は次のようなファイル名になっています。
Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG
一見問題なさそうですが、このファイル名は他の撮影でも何度でも再利用されるため、過去のデータと重複してしまう可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、ファイル名に「撮影日+その日の撮影連番」を加えるリネーム方法です。
ファイル名変更前(カメラから取り込んだ状態)
Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG
ファイル名変更後(撮影日と撮影連番を追加)
250412_0001_Z9A_0001.JPG
250412_0002_Z9A_0002.JPG
250412_0003_Z9A_0003.JPG
250412_0004_Z9A_0004.JPG
撮影データをPCに取り込んだ後、すぐにLightroomで編集に入るのは危険です。
前述の通り、撮影写真データすべてのファイル名変更(日付と撮影連番を加える)が完了すると、次は、データを安全に、効率的に管理するためのフォルダ構成を整えることが重要です。
この記事では、Adobe Lightroom Classic(LrC)での編集を前提にした、プロカメラマン向けの「安全でミスの少ないデータ整理術」を解説します。
撮影データは、撮影案件1件ごとにメインフォルダを作成して管理します。
フォルダ名には、以下の4要素を必ず含めるようにします。
[撮影日(YYMMDD)] [クライアント名] [イベント名]【エージェント名】
メインフォルダ名の例)
250407 **高等学校 入学式【エージェント名】
この命名ルールにより、フォルダ名を見るだけで「いつ・誰の・何のイベントか・誰からの依頼か」が即座にわかるため、編集・バックアップ・納品時のファイル操作ミスを未然に防ぐことができます。
このメインフォルダの中に、すべての元データ、編集済みデータ、納品データをまとめて管理します。
1つの現場を1つのフォルダで完結させることで、後日の削除作業やデータ整理もスムーズかつ確実に行えます。
特に、「撮影日から3ヶ月経過後にデータ削除」など、エージェントとの契約に基づいたデータ消去作業も、日付フォルダで誤操作なく行えるのが大きな利点です。
例えば、ある入学式撮影の写真データは次のようなフォルダで管理します。
250407 **高等学校 入学式【エージェント名】
├─ 00納品しない写真
│ ├─ 00保存
│ └─ 01削除
└─ 01スナップ
├─ 01朝の様子
├─ 02クラス内の様子
├─ 11入場・呼名
├─ 12入学式後半
├─ 13退場
└─ 99集合写真
├─ 1A
├─ 1A★押さえ
├─ 1B
├─ 1B★押さえ
├─ 1C
├─ 1C★押さえ
├─ 1D
└─ 1D★押さえ
撮った後の「整える力」が、納品品質や作業効率、そしてクライアントからの信頼を大きく左右します。
ファイル名・フォルダ名・階層構造まで、一つひとつのルールが“作品を守る壁”となります。
あなたの撮影スタイルに合った、最適なフォルダ構成を工夫してみてください。
そして、毎回の撮影でそれを“当たり前の習慣”にしていくことが、プロとしての成長につながります。
プロカメラマンのためのリスク管理・完全ガイド
├ プロカメラマンのためのデータ管理方法
├ カメラからPCへデータを取り込む際のワークフロー
├ 【プロの基本習慣】写真データを守る「安全なファイル名管理」術
├ カメラへのメモリーカード入れ忘れを防ぐ方法
├ センサーゴミ対策|原因・確認方法・掃除の基本
└
2025/4/24 スクールフォトカメラマンになる方法
2025/4/24 スクールフォトに必要な機材と費用
2025/4/23 スクールフォトカメラマンはいくら稼げる?副業・本業別のリアルな収入
2025/4/23 スクールフォトの仕事を獲得する5つの方法|副業からプロを目指すあなたへ
2025/4/21 集合写真のカメラ設定
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2025/4/15 入園式(保育園・幼稚園)の撮影方法
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2025/4/13 カメラへのメモリーカード入れ忘れを防ぐ方法
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2025/4/12 カメラからPCへデータを取り込む際のワークフロー
2025/4/12 プロカメラマンのデータ管理方法
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