プロカメラマンのための安全管理術

2025/4/12更新

カメラからPCへデータを取り込む際のワークフロー

カメラからPCへデータを取り込む際のワークフロー

撮影が終わり、無事に現場を離れたからといって、プロの仕事が完了したわけではありません。

「撮った写真がすべて正しく取り込まれているか」――この確認こそが、納品までのすべての工程の土台になります。

とくに、メインカメラ・サブカメラの2台体制で撮影した場合、それぞれのカメラで撮影したショット数と、PCに取り込んだデータ枚数が完全に一致しているかをチェックすることは、最も重要なポイントです。

さらに、PCに取り込んだデータをAdobe Lightroom Classic(LrC)に読み込んだ後の枚数も、撮影枚数と照合し、「漏れなく取り込みできている状態」を必ず確認しておきましょう。

たった1カットの取りこぼしが、撮り直し不可能な現場では致命的なミスにつながります。

本記事では、そのリスクを防ぐための「カメラからPCへの取り込みワークフロー」を、ステップごとに解説していきます。

目次

カメラからPCへデータを取り込む際のワークフロー全体の流れ

  1. 撮影終了後、その日のうちにカメラからPCへデータを取り込む
  2. 【重要】実際に撮影したショット数と、PC上の写真データ数が同一であることを確認する
  3. ファイルの整頓とチェックを行う
  4. バックアップを行う
  5. 編集ソフトAdobe LrCにデータを読み込む
  6. 【重要】実際に撮影したショット数と、Adobe LrC上のデータ数が同一であることを確認する

※ここではAdobe LrCで写真編集を行う前提で記事を書いています。別のツールで写真編集を行う方は、ご自身で使用する編集ツールに読み替えて記事をお読みください。

【プロの基本習慣】撮影終了後、その日のうちにカメラからPCへデータを取り込む

撮影が終わってホッと一息…でも、データはまだ“無防備”です。

現場での撮影を終えたあと、カメラマンに残された最も重要な仕事のひとつが、

「データをその日のうちにPCに取り込む」こと。

です。どんなに完璧な写真を撮っていても、そのデータが失われてしまえばすべてが無意味です。

トラブルは予告なく起こります。だからこそ、撮影後のデータ取り込みは“できるだけ早く”が鉄則です。

なぜ「その日のうち」に取り込むべきなのか?

  1. 撮影データはカードに“1つしかない”状態
  2. 撮影が終わった直後、写真データはカメラ内のメモリーカードのみに存在する状態です。カードの紛失、破損、誤ってフォーマット、上書きしてしまうなど、そうしたトラブルは、すべて「PCに取り込んでいれば防げた」ことです。
  3. 翌日には記憶が曖昧になる
  4. どのカットを撮ったか、トラブルはなかったか、現場での注意点などは記憶が新しいうちにチェックし必要に応じて記憶が鮮明な家に撮影報告書を書きます。
    データをPCに取り込むことで、すぐに確認・セレクト作業へ移行できるという点でも、業務効率が上がります。
  5. 翌日が別現場の場合、リスクが倍増
  6. 翌日別の撮影が入っている場合、うっかりフォーマット・上書きの危険性が跳ね上がります。 「あとでやろう」は、最も危険な思考です。

撮影当日の取り込み手順

帰宅後すぐに撮影データをPCにコピーします。

カメラからカードを抜く前にカメラの電源を切り、PCに接続したカードリーダーにメモリーカードを挿入し、「OS標準のファイル管理ツールを使って」メモリーカード上の撮影フォルダをPCへコピーします。

例えば、Nikon Z9、Nikon Z8の2台のカメラを使って撮影し、カメラのカスタムセッティング2つずつを使って撮影した場合次のようなフォルダに撮影データが含まれます。

111NCZ_9
159NCZ_9
138NCZ_8
148NCZ_8

PC上のどのフォルダ内にデータをコピーするかは、ご自身で決めて置くと日々のワークフローがシンプルでミスの発生も少なくなるでしょう。

OS標準のファイル管理ツールを使ってデータをコピーする理由

ファイル編集ソフトAdobe Lrcや、Nikon NX Studioなどの写真ビュアー上にもメモリカードからPCへ取り込む機能が付いていますが、確実にデータをもれなくPCにコピーするために「OS標準のファイル管理ツール」を使用してカメラからPCへデータをコピーすることを強くおすすめします。

ちゃんとコピーしたはず…」なのに、データが足りない!?

【実話ベースで解説】写真データをコピーするならOS標準ツールが安全な理由

ある日、筆者が実際に体験した出来事です。

撮影後のデータを、Nikon純正の画像ビュアーソフト「NX Studio」を使って、「新しく撮影したデータのみを自動的にコピー」する設定でPCに取り込んだところ、

後で確認すると、途中のデータが一部抜け落ちていることに気づきました。 あわててNikonのサポートに連絡したところ、次のような説明を受けました。

「PC上にあるNX Studioのデータベース情報が破損している可能性があります。一度キャッシュを削除してからコピーし直してください」

つまり、ソフト内のデータベースやキャッシュの不具合により、本来コピーされるはずの写真がスキップされてしまっていたのです。

ソフトは便利だけど、100%信頼できるわけではない

写真管理ソフトには「撮影日ごとに整理」「重複ファイルのスキップ」「新しく撮影したデータのみを転送」「転送時に自動的にファイル名を変更する」など便利な機能が多く備わっています。

しかし同時に、そのソフト固有のバグや不具合、設定ミスによる“見えないリスク”も存在します。

そして何より怖いのが、コピーに失敗していても気づかないことがあるという点です。

たとえば、自動転送機能でデータを取り込んだと思い込んでメモリーカードをフォーマットしてしまった場合、 二度と取り戻せないデータが消えてしまうリスクがあります。

OS標準のファイル管理ツールを使うべき理由

  1. コピーの成功・失敗が明確に表示される
  2. たとえばMacの「Finder」でコピー作業をしている際にUSBケーブルが途中で外れるなどしてコピーに失敗すると、その場でエラーメッセージが表示されます。
    Windowsの「エクスプローラー(Explorer)」でも同様に、ファイルのコピー状況やエラーが視覚的に確認できるため、失敗にすぐ気づくことができます。
  3. 全ファイルを“確実に”コピーできる
  4. OS標準のツールを使えば、複雑な条件分岐やキャッシュ処理などを介さず、単純明快に全ファイルをそのままコピーできます。
    選択ミスや自動フィルタによる漏れもなく、人間の目で管理しやすい状態を保てます。
  5. トラブル時に原因を特定しやすい
  6. OS標準ツールはシンプルな機能ゆえに、「いつ・どこで・どのファイルが失敗したか」などのエラー箇所が特定しやすく、復旧対応が早くなるという利点もあります。

【まとめ】コピー作業に「安心の標準」を使うことがリスク管理の第一歩

プロカメラマンにとって、写真データは何よりも大切な“成果物”です。

納品後のトラブルや信用低下を避けるためにも、「便利さ」よりも「確実さ」を優先する意識が必要です。

【重要】実際に撮影したショット数と、PC上の写真データ数が同一であることを確認する

実際に撮影したショット数と、PC上にコピーされた写真データの数が同一であることをカメラごとに確認します。

111NCZ_9
159NCZ_9
138NCZ_8
148NCZ_8

というフォルダをカメラからPC上に取り込んだ場合、

111NCZ_9
159NCZ_9

の2つのフォルダにNikon Z9で撮影した写真データが含まれます。

138NCZ_8
148NCZ_8

の2つのフォルダにNikon Z8で撮影した写真データが含まれます。

ニコンのカメラで、「電池チェック」メニューを表示すると、次のような画面が表示されます。今カメラに入っているバッテリーで何枚撮影したか、そのバッテリー残量は何%あるかを確認することができます。

Nikon Z8、電池チェックメニュー
Nikon Z8、撮影後に表示した電池チェックメニュー。バッテリー1本で3866枚撮影して残容量は26%(筆者撮影)

筆者は過去の電池チェックメニューで確認したショット数、電池残量をすべてエクセルで管理しており、撮影イベント別に過去にさかのぼってショット数や電池残量(100%換算撮影可能枚数)を確認することができます。

撮影時にバッテリー交換を行った場合は、使用したバッテリーをカメラに挿入すると、そのバッテリーを使った撮影ショット数とそのバッテリーのバッテリー残量がわかりますので、その日使用したすべてのバッテリーの撮影枚数を集計して、

各カメラ毎の総撮影ショット数と写真データ数が同一であること
すべてのカメラの撮影ショット数と、取り込んだ写真データの総数が同一であること

を確認します。

バッテリーで確認できる撮影ショット数と写真データ数の値が1でも異なる場合はデータの取り込み漏れや、その日撮影した以外のデータが含まれている可能性があるので再確認を行います。

例えば、次のような時にショット数と写真データ数が異なることがあります。

撮影ショット数>写真データ数の場合

  1. 撮影写真データがPC上にすべて取り込みできていない
  2. (Nikonカメラは)音声データを記録した際は、音声ファイル数分だけ撮影ショットよりもデータ数が多くなります
  3. 撮影中に一部データを削除した場合はデータ数が少なくなります(当日の削除は行わないようにしましょう)

撮影ショット数<写真データ数の場合

  1. コピーしたフォルダに前日以前に撮影したデータが含まれる場合はデータ数が多くなります
  2. ファイル管理ツールを使って、フォルダ中の過去データは削除します。
  3. その日使用したすべてのバッテリーの数を合計できていない場合、撮影ショット数合計が少なくなります
  4. カメラバッグの中から使用済みのバッテリーを探して撮影ショット数を再集計します(このチェックにより、使用済みバッテリーの充電漏れ事故を防ぐことができます)。

撮影ショット数=写真データ数の場合

(ニコンカメラの場合)カメラのメニューから、記録フォルダ番号を変更(1数字を大きく)することにより、写真データのファイル名連番が0001から割り当てられます。

撮影日ごとに記録フォルダ番号を変更することにより、ファイル名連番が0001から始まるので、(Nikonカメラの場合)そのカスタムメニュー毎の撮影連番がわかりこの後のファイル整理・管理がやりやすくなります。

【プロカメラマンのファイル管理術】撮影ファイル名に「撮影日+連番」を加えるべき理由

カメラからPCに取り込んだ直後の写真データのファイル名は、

Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG

のように「[3桁文字]_[4桁連番」.JPG」のようなシンプルなファイル名になってます(RAWデータの場合、ニコンカメラでは、「.NEF」という拡張子になります)。

カメラ別、カスタムメニュー別に写真ファイル名の先頭3文字をユニークな文字に設定しておきます

上記ファイル名の左側の3文字(上記例では[Z9A]の部分)は、あらかじめカメラのメニューから、(ニコンカメラの場合)カスタムメニュー番号別に好きな文字列3文字を割り当てることができます。この3文字を使用するカメラすべてで、カメラ別、カスタムメニュー別にすべて異なる3文字にあらかじめ設定しておくことをおすすめします。筆者の場合、次の設定にしています。

Nikon Z9のカスタムメニューA ⇒ [Z9A]
Nikon Z9のカスタムメニューB ⇒ [Z9B]
Nikon Z9のカスタムメニューC ⇒ [Z9C]
Nikon Z9のカスタムメニューD ⇒ [Z9D]
Nikon Z8のカスタムメニューA ⇒ [Z8A]
Nikon Z8のカスタムメニューB ⇒ [Z8B]
Nikon Z8のカスタムメニューC ⇒ [Z8C]
Nikon Z8のカスタムメニューD ⇒ [Z8D]
Nikon Z6iiの通常設定 ⇒ [Z6A]
Nikon Z6iiのカスタム1 ⇒ [Z6B]
Nikon Z6iiのカスタム2 ⇒ [Z6C]
Nikon Z6iiのカスタム3 ⇒ [Z6D]

あらかじめ、上記のように全てのカメラのすべてのカスタムメニューで3文字をユニークな文字にしておくことにより、ファイル名を見ただけでどのカメラのどのカスタムメニューで設定したかがわかり、カメラの不具合やカスタムメニューの設定不具合の原因を調べる際に役立ちます。

撮影ファイル名に撮影日、撮影連番の数字を加えます

カメラからPCに読み込んだファイルの数が撮影ショット数と一致することが確認できたら、次にファイル名に「撮影日+連番」を加えます。

例えば、カメラからPCに写真データを取り込んだ直後のファイル名は次のようなファイル名になっています。

Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG

一見問題なさそうですが、このファイル名は他の撮影でも何度でも再利用されるため、過去のデータと重複してしまう可能性があります。

そこでおすすめしたいのが、ファイル名に「撮影日+その日の撮影連番」を加えるリネーム方法です。

実践例:ファイル名の変更前と変更後

ファイル名変更前(カメラから取り込んだ状態)

Z9A_0001.JPG
Z9A_0002.JPG
Z9A_0003.JPG
Z9A_0004.JPG

ファイル名変更後(撮影日と撮影連番を追加)

250412_0001_Z9A_0001.JPG
250412_0002_Z9A_0002.JPG
250412_0003_Z9A_0003.JPG
250412_0004_Z9A_0004.JPG

【撮影後の作業効率と安全性を高める】ファイルの整頓を行う理由

カメラからPCへのデータ取り込みが終わったら、まずやるべきは「整理整頓」

撮影データをPCに取り込んだ後、すぐにLightroomで編集に入るのは危険です。

前述の通り、撮影写真データすべてのファイル名変更(日付と撮影連番を加える)が完了すると、次は、データを安全に、効率的に管理するためのフォルダ構成を整えることが重要です。

この記事では、Adobe Lightroom Classic(LrC)での編集を前提にした、プロカメラマン向けの「安全でミスの少ないデータ整理術」を解説します。

フォルダ名は「撮影日+クライアント+イベント+エージェント」で明確に

撮影データは、撮影案件1件ごとにメインフォルダを作成して管理します。

フォルダ名には、以下の4要素を必ず含めるようにします。

[撮影日(YYMMDD)] [クライアント名] [イベント名]【エージェント名】

メインフォルダ名の例)

250407 **高等学校 入学式【エージェント名】

この命名ルールにより、フォルダ名を見るだけで「いつ・誰の・何のイベントか・誰からの依頼か」が即座にわかるため、編集・バックアップ・納品時のファイル操作ミスを未然に防ぐことができます。

フォルダ内構成の基本方針:すべての写真を一括管理

このメインフォルダの中に、すべての元データ、編集済みデータ、納品データをまとめて管理します。

1つの現場を1つのフォルダで完結させることで、後日の削除作業やデータ整理もスムーズかつ確実に行えます。

特に、「撮影日から3ヶ月経過後にデータ削除」など、エージェントとの契約に基づいたデータ消去作業も、日付フォルダで誤操作なく行えるのが大きな利点です。

サブフォルダ構成の一例(入学式の現場)

例えば、ある入学式撮影の写真データは次のようなフォルダで管理します。

250407 **高等学校 入学式【エージェント名】
├─ 00納品しない写真
│ ├─ 00保存
│ └─ 01削除
└─ 01スナップ
  ├─ 01朝の様子
  ├─ 02クラス内の様子
  ├─ 11入場・呼名
  ├─ 12入学式後半
  ├─ 13退場
  └─ 99集合写真
    ├─ 1A
    ├─ 1A★押さえ
    ├─ 1B
    ├─ 1B★押さえ
    ├─ 1C
    ├─ 1C★押さえ
    ├─ 1D
    └─ 1D★押さえ

フォルダ構成のポイント解説

  1. シーン別フォルダを階層化して分類
  2. 「朝の様子」「入場」「集合写真」など、撮影シーンや時系列ごとに整理することで、Lightroomでのセレクト作業・書き出し作業が圧倒的にスムーズになります。
  3. フォルダ名の先頭に半角数字を入れる
  4. 「01朝の様子」のように番号を振っておくことで、Adobe LrC内でのフォルダ表示が辞書順(=時系列順)になり、データの流れをつかみやすくなります。
  5. 集合写真フォルダを独立させる
  6. 集合写真は高解像度で納品することが多く、編集処理や書き出し方法も異なるため、スナップ写真とは別に管理することで、書き出し時の解像度ミスや納品ミスを防止できます。
  7. 「00納品しない写真」フォルダを用意
  8. 納品はしないものの削除せずに保管しておくデータは「00保存」へ、完全に不要なデータは「01削除」へ、このように“納品対象外”を一時的に分離管理しておくことで、 後のセレクト作業中に誤って削除したり、納品対象と混ざることを防げます。

フォルダ管理がもたらす4つのメリット

  1. 編集時の迷いが減り、作業スピードが向上
  2. 納品時のミスを防ぎ、信頼性アップ
  3. フォルダ名で検索でき、データの所在がすぐわかる
  4. 日付ごとの一括削除が安全かつ効率的に行える

【フォルダ管理のまとめ】ファイル管理の整頓は、写真クオリティと同じくらい大切な“作品の一部”

撮った後の「整える力」が、納品品質や作業効率、そしてクライアントからの信頼を大きく左右します。

ファイル名・フォルダ名・階層構造まで、一つひとつのルールが“作品を守る壁”となります。

あなたの撮影スタイルに合った、最適なフォルダ構成を工夫してみてください。

そして、毎回の撮影でそれを“当たり前の習慣”にしていくことが、プロとしての成長につながります。

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