2025/4/30更新
日常保育・日常の様子の撮影方法

「日常保育」・「日常の様子」とは、保育園・幼稚園をメイン対象としたスクールフォト撮影ジャンルの一つです。
「日常保育の様子を残したい」というニーズは、保育園・幼稚園からの撮影依頼の中でも非常に多い撮影ジャンルです。
特別な行事ではなく、普段の園児たちの自然な表情や生活の様子を記録することで、保護者にとって大きな価値のある写真が生まれます。
撮影時間は通常3〜4時間程度ですが、撮影エージェントによっては「朝〜夕方まで」の丸一日の撮影となることもあります。
日常保育 撮影の一般的なタイムスケジュール(例)
- 8:30〜9:00 撮影前の事前打ち合わせ
- 9:00〜 登園の様子、(複数クラスが同じ部屋で)合同保育
- 9:30〜 (クラスごとに)朝の会
- 10:00〜 おやつ(乳児はせんべいや牛乳)
- 10:30〜 自由遊び(室内遊び・園庭遊び)
- 11:00〜 クラス活動:歌・リズム遊び・制作・お散歩など
- 11:30〜 昼食(年齢の低いクラスから順に)
- 13:00〜 午睡(撮影不要な場合あり)
- 15:00〜 午後のおやつ(撮影終了)
※3〜4時間の撮影の場合、昼食の様子を撮影したところで撮影終了になり、午睡以降は撮影対象外となることが多いです。
日常保育、朝の打ち合わせポイント
撮影開始前に最大30分ほど時間を設けて、撮影担当の先生、または園長先生ととしっかりコミュニケーションを取ります。以下の項目を確認するのが基本です。
- 撮影対象クラスを確認
通常の「日常保育」撮影では、全クラスを撮影することが多いですが、まれに、「今日は幼児クラス(3〜5歳児クラス)を撮影してください」「乳児クラス(0〜2歳児クラス)をメインで撮影してください」のように撮影対象クラスを指定されることもあります。
- 全体のタイムスケジュールの把握
通常保育の流れや、特別活動の有無(外部講師による体操教室、園外活動びなど)。
朝、園児たち全員が登園するまでの時間は複数クラスが同じ部屋に集まって「合同保育」を行っている場合もあります。
園によっては、クラスごとに園庭あそびのタイムスケジュールを作成している場合もあります。
- 昼食開始時刻を確認
(一番早い)0歳児の開始時刻、(一番遅く始まる)5歳児の開始時刻を確認。
昼食撮影は、全員の昼食の様子を撮影するために、タイムスケジュールを確認して時間に合わせてそのクラスを撮影します。
- 午睡を撮影するか?を確認
基本的に「午睡は撮影不要」と言われるケースが多いです。また、撮影時間が午前始まりの3〜4時間のことが多く、ほとんどの「日常保育」撮影では、昼食撮影までで撮影時間が終了してしまいます。
- 撮影NG園児が居るか
例えば、
- 一時保育クラスの園児は撮影不要
- 個人情報保護のため、個人の名前のプレートが大きく写らないようにして欲しい(遠景ならOK)
- **クラスに一人、撮影NG園児が居ます(⇒判別方法を詳しく聞ききます)
- 昼食の際に「アレルゲン表示プレートが写り込まないようにして欲しい」
などの要望をいただくこともあります。
撮影が難しい「撮影NG」の場合は、「できるだけ対応しますが、もしかしたら写真に写ってしまう場合があります。その場合は後で園で写真を確認してNG写真を削除してもらえればと思います」と伝えて置くと、「撮影NGと伝えたのに写真に写っている」というクレームを防ぐ対策になります。
- 声がけの可否
カメラマンから園児に声がけをしてよいか事前に確認。ほとんどの園で特に指定はありませんがまれに、声がけNGの園があります。
「絵本の読み聞かせの際は声がけしないでください」など特定シーンで声がけNGの時もあります。
- 集合写真撮影の有無
「日常保育」の撮影では、通常は集合写真を撮影しないことが多いですが、例外的に行う場合もあるので要確認。
- 部屋の配置を確認
初めての訪問の場合、各クラスの配置を確認して部屋の配置をメモします。例)1Fは手前から0、1歳児クラス、2Fは手前から2〜5歳児クラス。
- お散歩があるか
お散歩がある場合、お散歩にカメラマンがついていくか。どこへ行くか。
例)
- 10:00〜 3歳児クラスが■■公園へ行きます。
- 10:15〜 4歳児クラスが(別の)▲▲公園へ行きます。
- 3歳児クラスをある程度撮影したら、カメラマンさんは直接▲▲公園へ向かってください。
- 11:15から0歳児の昼食が始まるので
- 4歳児を一通り撮影したら(カメラマン一人で)園に帰って来てください
のように複雑な撮影指示をいただくこともあります(極端な実例です)。
- (園庭あそび撮影する場合)カメラマンはどこから園庭に出られるか
「玄関を出て右方向の通路に行くと園庭に出られます」「*歳児クラスの窓から、テラスを通じて園庭に出られます」などを教えてもらえます。
- 人見知りする園児は居ますか?
特に4月〜6月頃の新しい年度始まりは入園したての園児に人見知り園児が居る場合があります。
- 「人見知りして泣いている園児を撮影してもいいですか?」
を確認「成長の過程の一つとして撮影OKですよ」と言われることがほとんどです。
- 「0歳児クラスは人見知りする園児がいるので、望遠レンズで遠くから撮影してください」
と具体的な指示をもらえる場合もあります
- 「人見知りして泣いている園児がいたら、部屋を出たり入ったりしながら何度か撮影に入りますので、だんだん慣れてくると思います。」
のように伝えると、(人見知り園児の撮影にも慣れていると思い)安心してもらえるかもしれません。
- 撮影要望の確認
「自然な様子の写真がほしい」「グループショットメインで撮影して欲しい」などの要望をいただくことがあります。
日常保育の撮影ポイント
基本方針
- 全園児を漏れなく撮る
一枚も写真が無い園児が出ないよう、まんべんなく撮影します。
- できる限り平等に撮る
撮影枚数に大きな偏りがないように意識する。園児の中には写りたがる子もいれば、撮影を嫌う園児が居ることもあります。カメラマンに近づく園児の写真ばかりでなく、できるだけ平等に撮影します。
- バリエーション多く撮影
構図・角度・カメラの高さ・背景・人数構成(ソロ/グループ/人数バリエーション)、全景(雰囲気写真)、などを工夫する
- (ソロショットよりも)グループショットを多めに
園児同士で遊ぶ様子や交流シーンを中心に構成することで、自然な表情が得やすい。園児同士の関わり、園児と先生との関わりのシーンを撮影します。
バリエーションの撮影例
- 自然な様子(声がけ無し)
- 遊びに集中している様子、友達同士のコミュニケーションなど
- 何気ない日常の瞬間
- 声がけで笑顔を引き出す
「何を作っているの?」などと声をかけて、パッと笑顔になる瞬間を捉える
- ニコパチ(正面カメラ目線)、ポージング写真
記念写真的な写真。園児たちから
- (仲良し同士で)「撮ってー」
- 「**ちゃん、一緒に撮ろう」
とアピールしてくる子もいます。
- シーンのバリエーション撮影
室内遊び、外(園庭)遊び、食事、会話、表情など、自然な瞬間を多角的に撮影。
特に重視されるのは(1)(2)の「自然な様子」です。保護者が見てほっこりする瞬間を大切に。(3)ポージング写真ばかりにならないように注意しましょう。
納品枚数の目安
- 3時間撮影で 1,000枚以上納品 が目標
スクールフォト撮影に慣れないうちは、1,000納品が難しいと感じるかもしれませんが、撮影に慣れてくると、次々とバリエーション撮影を行いながら1,000枚以上納品できるようになるでしょう。
- 園児数やクラス数が少ない場合は無理に枚数を増やさず、質を優先します。
昼食の様子の撮影ポイント
食事風景も成長の記録の一つ。日常保育の撮影の中で、全員を枚数多く撮影できるのが昼食風景の撮影です。
自然で温かい一枚を残すための撮影ポイントについて解説します。
全員を撮影する
昼食風景では、クラス内の全園児をもれなく撮影することが基本です。
撮影漏れを防ぐためには、以下のような動線設計が効果的です。
- クラスごとに、テーブルの配置を確認し、「一筆書き」で順番に撮影
⇒ 効率よく回ることで、撮り逃しを防止できます。
- 同じルートを2周以上回ることを推奨
⇒ 撮影ミス(ピンボケ・目つぶり)や選定外カットを補い、園児ごとの写真バリエーションも増やせます。
露出設定に注意
室内の全テーブルを撮影してまわるので、窓に近い場所、窓を背にしている園児、窓から入る自然光が顔を照らしている園児など、露出差が結構ある場合があります。
逆光の園児の顔が暗くならないように「マニュアル露出」での撮影がおすすめです。顔が暗くなってしまった場合は写真編集時に明るさ調整します。
一部の園児に窓からの直射日光があたり室内の露出差が激しい場合は、先生にお願いしてカーテンやレースカーテンを閉めてもらうのも良いでしょう。
できるだけグループショットを撮影します
2名単位、3名単位、テーブル単位など、できるだけ(ソロショットではなく)グループショットメインで撮影します。
座席配置の関係で一人で食べている園児が居た場合は、背景に別の園児が含めるように撮影すると、一人ぼっちで食事しているさみしい写真を避けながら楽しく食事しているように見えます。
グループショットを一通り撮影して時間がまだある場合は、全員のソロショット(縦位置写真)を撮影しても良いでしょう。
複数園児のグループショットを撮るときのコツ
- 1場面あたり2〜3ショット撮影
目つぶりを防ぐために、秒間5〜8コマの連写設定で、各場面を2〜3ショットずつ撮影するがおすすめです。
- 撮影のたびに笑顔を引き出す必要はありませんが、自然な交流や表情の瞬間をしっかり押さえることが大切です。
昼食撮影時の声がけ例
- 飛び道具:「大きなお口で食べられるかなー?」
⇒ 無理なく自然に笑顔や食べている瞬間を引き出す飛び道具的な声がけです。
⇒ 「僕も食べれるよー」「見てみてー」とあちこちから声がかかり収集がつかなくなることもあるので使いすぎに注意。
- 「美味しそうー」
- 「おかわりはいかがですかー?」
⚠ 注意点:
- 声がけのしすぎは逆効果。表情がわざとらしくならないように注意
- 食べている瞬間の口の中が見える写真は避けます
⇒ 写真を見た人が不快に感じる可能性があります。
- 口に詰めすぎている状態は「危険行為」に見える場合もあるため要注意
すでに食べ終えた園児も撮影対象
撮影のため、クラスに入ったタイミングで、すでに食べ終えてしまっている園児がいた場合でも「その子の写真が1枚もない」という事態を避けるため、何かしらの撮影を行うようにします。
食事を食べ終わった園児の撮影例:
- 笑顔の写真や友達との交流の様子など
- 飛び道具:食べているふりをしてもらう
- 食べ終えて絵本を読んでいる様子など
昼食の様子、バリエーション写真の例
- 隣に座る2〜3名のグループショット
自然に食べている様子、交流の様子を撮影。目つぶり対策のため、各場面2〜3ショットずつ撮影していくと全体を素早く撮影できます。
- テーブル単位ショット
2〜6名ほどで構成される同じテーブル単位撮影
- ニコパチ・テーブル単位
声がけで笑顔を引き出し、全員カメラ目線で撮影(カメラはやや高めの位置から撮影)
- 配膳の様子
食事が運ばれてくる場面。お当番の園児が配膳する園もあります。
- 食事を取りに来る園児
自分の分を受け取る真剣な表情、どれが多いかなと選んでいる様子などが撮れるシーン。
園児が見える側から撮影します。配膳する先生の邪魔にならないように撮影します。または、先生に「ここから撮影してもいいですか?」と確認した上で撮影します。
- お当番さんの様子
園によっては、数名のお当番さんが
- お当番さんが、調理室へ昼食を取りに行く(タイミングが合えば)
- 配膳する
- 前にでて手を合わせて「いただきます」をする
という場合もあります。お当番さんの様子も撮影します。
- 全景・いただきますの写真
食事が始まる際に全員で手を合わせて「いただきます」の写真。
- 全景写真(雰囲気写真)
クラス全体が写る引きの構図。空気感重視。
- 全景・声がけ写真
カメラ目線の全員集合風カット。声がけあり
- 食器を片付ける
(ほとんどの園児が既に食べ終えているクラスでは)片付け中の様子も撮影。
- おかわりの様子
園によっては、「おかわり」がある場合があります。園児と先生がやり取りする温かいシーン。自分でおかわりをよそっている様子。
昼食の様子撮影のまとめ
昼食時間の撮影は、「栄養」や「しつけ」だけでなく、日常の中の成長を切り取る貴重な時間です。
食事中だからこその笑顔や真剣な表情、友達との交流など、多くのドラマが詰まっています。
自然体を大切にしつつ、漏れなく・バリエーション豊かに撮影することがプロの仕事です。
午睡の様子の撮影ポイント
午睡の撮影方法 のページで詳しく解説しています。
日常保育の撮影におすすめの機材
レンズ
- 室内用:
24-120mm f/4 や 24-105mm f/4(標準 便利ズーム)
⇒ 保育内や食事シーンで距離を選ばず対応可能
スクールフォト撮影では、複数人物にフォーカスが合わせるため f値を f/5.6以上に絞り込んで撮影することが多いので、24-70mm f/2.8などの大三元レンズよりも、f/4で焦点範囲が広い便利ズームの方が圧倒的に役立ちます。
- 屋外用:
24-200mm、24-240mm、28-400mm(望遠系 高倍率ズーム・便利ズーム)
遠くの園児も逃さず撮れる。園庭あそび・お散歩・運動遊びに便利
- 午睡撮影用(暗所用):
明るい単焦点(f1.2〜f/1.8等)、または f2.8通しの大三元ズームレンズ
午睡時や暗い室内でもノイズを抑えて撮影可能
カメラボディ
メイン+サブの2台体制推奨。異なるレンズを装着しておけば、構図の切り替えがスムーズ。また機材トラブルの際も撮影を継続できます。
クリップオンストロボ
- 天井が白
天バン(天井バウンス)撮影可
- 天井に色がある場合
ディフューザーやソフトパネルを使って、弱めの直当てが効果的
- ディフューザーがない場合
直当てで十分対応可能な場面が多い。
光量設定は、マニュアル発光で弱めに当てるのがおすすめですが、マニュアル発光に慣れていない場合は、TTL撮影でもOK。TTL撮影する場合は、ストロボの光量設定で-1〜-2EV程度の光量補正を行うと、近くの人物に光が当たりすぎた「いかにもフラッシュを使って撮影しました」というような顔テカテカの写真になることを防げます。
メーカー純正の場合、TTL撮影でもある程度美しく撮影できますが、Profoto などのサードパーティーストロボはTTLがうまく機能しない場合があり、光量補正はマニュアルで行う、または、実際にテスト撮影を行い光量自動補正量を調整するのがおすすめです。
ポシェットのような小さめバッグ
撮影中、メモ用紙、筆記用具、ブロアー、スペアバッテリーなどを入れます。
カメラ2台持ちで撮影する場合は、もう1台のサブカメラのレンズをこのポシェット風バッグで支えることによりマウント部分への負荷を軽減する、というテクニックもあります。ただし、最近では、撮影時は便利ズーム1本で撮影することが増え、2台持ち替えながらの撮影ケースは少なくなりました。
三脚
持ち運びやすい軽量タイプ(1kg前後)のカーボン三脚がおすすめ。集合写真がある場合に三脚を使用。ただし、日常撮影では集合写真撮影を行うことは少ないので、基本的に不要。
上履き
上履きを持っていくと役立ちます。園によてはスリッパを貸してもらえます。
園によっては、園児・先生ともに上履きを履かずに全クラスが素足・靴下ものまま活動している園もあります。その場合は、カメラマンも靴下のまま活動します。
その他注意事項
- 乳児クラス(0〜2歳)の部屋に入室する際は上履きを脱ぎます
乳児クラスは園児たちが床をハイハイすることもあり、上履きやスリッパを脱いで部屋に入ります。
- カメラマンの服装・振る舞いも“保育の一部”として見られる
清潔感がある、動きやすい服装で訪問します。
カメラマンの服装は原則、「全身黒色」が多いです。
- ガラスや鏡などへの写り込みで目立たせないため
- あくまでも黒子に徹する
- ピアスなどのアクセサリー類は外しておく
万が一外れてしまった場合の子どもによる事故を防ぐため
- 撮影中は、休憩時間でも喫煙禁止
タバコの匂いでクレームになることがあります。
- 飛び道具:乳児クラスの人見知り泣きを防ぐために
- 「黒い服装だと乳児が怖がるので、白などの明るい服装で行くこともあります」というカメラマンも居ます。
- 乳児クラスに入る時は、先生に見えるのように「アンパンマン柄のような保育士が着ているエプロンをつける」
⇒ 結構効果ありますが準備が大変ですね。筆者が撮影に入った時に、ひどい人見知りが居るとのことで、先生がエプロンを貸してくれ「新しい先生だよー」と言いながら撮影したところ、かなり効果がありましたw
日常保育撮影のまとめ
日常保育撮影は、園児たちの成長をリアルに残す大切な仕事です。
大げさな演出をせず、カメラマン自身が“保育の空気”になじむことで、より自然で温かみのある写真が撮影できます。
プロカメラマンとして求められるのは、「丁寧さ」と「気配り」。
声かけ、立ち位置、機材選びまで、全てが保育写真の質を決める大切な要素です。
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