2025/4/16更新
卒園式(保育園・幼稚園)の撮影方法

卒園式は、園児にとって人生最初の“旅立ち”であり、保護者にとっては子どもの成長を実感する大切な節目でもあります。
その特別な一日を写真に残すことは、プロのカメラマンにとって大きな責任であると同時に、かけがえのない感動の瞬間に立ち会える貴重な仕事でもあります。
式典の厳かな雰囲気を壊さず、園児や先生、保護者の自然な表情を捉えるためには、事前の準備・動線の確認・各シーンごとの立ち位置・機材の選定など、細やかな配慮と計画が必要です。
本記事では、卒園式の全体の流れを把握したうえで、シーンごとに押さえておきたい撮影のポイントをプロカメラマン向けにわかりやすくまとめています。
保護者の心に届く一枚を撮るためのヒントとして、ぜひお役立てください。
目次
卒園式(保育園・幼稚園)撮影の基本的な流れ(全体概要)
卒園式の撮影は、以下のような一連の流れで進行することが一般的です。
- 撮影前の先生との打ち合わせ
- イメージカットを撮影
- 登園・受付時の看板前記念写真(家族写真)撮影
- 控室で、卒園児の胸にコサージュをつける様子などを撮影
- 式典本番の撮影(証書授与、歌など)
- 式後の集合写真撮影
- (謝恩会を撮影)
- 再度の家族写真撮影や先生との記念撮影、フリーショット
※園によっては、式典開始前に集合写真を撮影することもあります。
卒園式(保育園・幼稚園)【式典本番】の流れ
卒園式の進行は園によって異なりますが、主に以下のような構成です。
- 卒園児入場
- 開式の言葉
- 卒園証書授与 【最重要】
- 園長挨拶
- 記念品贈呈
- (在園児による)送る言葉・歌
- (卒園児による)お別れの言葉・歌
- (園生活の思い出をビデオ上映)
- 閉式の言葉
- 卒園児退場
卒園式撮影のポイント(全体)
卒園式撮影の中でもっとも重要なのは「証書授与シーン」
卒園式において、保護者がもっとも写真として残したいと思うのが証書を受け取るシーンです。
このとき園児は、保護席に背を向けており、保護者からは園児の表情が見えません。
つまり、授与の瞬間の表情を写せるのはカメラマンだけです。
だからこそ、プロのカメラマンには、この一瞬を逃さず、一人ひとり全員を確実に記録する責任があります。
証書授与シーンをきちんと押さえることで、保護者にとって一生の宝物となる写真を提供できます。
撮影時は「静かに」「控えめに」が基本
卒園式はフォーマルな式典であり、保護者・先生・園児が真剣に向き合う場です。
カメラマンは決して主役ではなく、“記録する存在”として空気を乱さないことが求められます。
- 派手な動きは控える
バリエーション撮影しようと思っても、立ったりしゃがんだり動きながらの撮影はNG。
- シャッター音はできるだけ静かに(無音設定やサイレントモード)
- 式典の最中に移動する際は保護者の視界を遮らないようにしゃがんで移動
- 式典の撮影中は園児や保護者に話しかけない
カメラマンの所作が静かで丁寧であるほど、式全体の空気が守られ、
写真にも「その場の美しさと感動」が自然に写り込みます。
機材は「万全の2台体制」が基本
卒園式は一発勝負の現場です。
何かトラブルがあったとき、撮り直しができるシーンはありません。
機材トラブルに備えて、すぐに持ち替えられる場所に予備カメラを準備しておくのもポイントです。
メイン機(標準ズーム)、予備機(標準ズーム)、サブ機(望遠ズーム)の3台体制で撮影するのも良いでしょう。
【まとめ】感動の一日を「写真というかたち」に残すために
卒園式の撮影は、単に記録するだけではありません。
園児の表情、保護者の思い、先生のまなざし、そのすべてを一枚の写真に込めることが、プロの仕事です。
その中でも「証書授与の瞬間」は最も大切な1枚、その瞬間に立ち会えるのは、プロカメラマンのあなただけです。
静かに、控えめに、けれど確実に。
卒園式という大切な1日を、写真というかたちに美しく残しましょう。
撮影開始前の先生との打ち合わせポイント
卒園式撮影を成功させるために、事前確認で差がつくプロの段取りについて解説します。
卒園式撮影では、「当日の動きに柔軟に対応する力」と同時に、「事前の打ち合わせの質」が撮影の成功を大きく左右します。
カメラマンにとって式前の先生との打ち合わせは、“撮影の設計図を描くための大切な時間”です。
この記事では、卒園式撮影の現場で、先生との打ち合わせ時に確認すべきポイントを詳しく解説します。
式次第または園内資料をもらい、式典の流れを把握する
まず初めに、式の全体像を正確に把握することが重要です。
式次第(当日のプログラム)または、園内の年間行事予定表のコピーを事前に受け取り、どのタイミングで何が起こるのかを頭に入れておくことで、撮影ポジション・タイミングの判断がスムーズになります。
各シーン毎に、園児の動線と向く方向を卒園式会場で確認
撮影本番で迷わないためには、「実際の会場」で動線を確認する打ち合わせが理想的です。
撮影成功のカギは、「カメラマンがどこに立ち、どの瞬間をどう撮るか」を明確にしておくことです。
卒園式では、入場・証書授与・退場・卒園児による歌など、園児が移動するシーンが複数あります。
朝の打ち合わせで、各シーンでの園児の動線や向く方向を確認します。
園児の動線、園児がどの方向を向くか、カメラマンの立ち位置、必要に応じた移動ルート。
これらをすべて事前に確認し、式の進行とともにカメラマンがどこに立つべきか、どのタイミングで動くかをあらかじめ決めておくことが重要です。
式の開始時刻を確認
式の開始時刻を確認し、それまでの時間に看板前家族写真を撮影しても良いかを確認します。
登園した卒園児の控室を確認し、看板前家族写真撮影と、控室の園児の様子(園児の胸にコサージュをつける様子)のどちらの撮影を優先するかについて確認します。
控室や看板前撮影を行っていても、式典が始まる10分前には会場に戻り本番撮影の準備を行います。
証書授与シーンのテスト撮影と構図確認
卒園式で最も重要な撮影シーンである「証書授与」は、朝の事前打ち合わせの段階で撮影シミュレーションをしておくことが不可欠です。
証書授与シーンでは、どの位置で証書が手渡されるか、どちらの手で受け取るか、受け取った後にどこへ戻るのか、などの一連の流れも把握しておくと、ベストな瞬間を逃さず撮影できます。
確認すべきポイント:
- 園児が呼ばれる順番
事前に園児が呼ばれる順番を確認しておくことにより、呼ばれた園児が「はいっ!」と手を挙げる動作も狙って撮影できます。
- 園児が演台に来るまでの動線
クラスが複数あり園児数が多い園の場合は、複数クラスの園児が同時に演台に来て一人ずつ証書を手渡される、という方式もあります。
- 園児が証書を受け取る際の動作、手の動き・顔の向き
右手差し出し、左手差し出し、証書を受け取り、少し証書を高く上げて、園長先生を見つめて、回れ右して・・・など、細かい動作を決めて練習している園もあれば、特に練習しておらず園児が素早く証書を受け取る、という園もあります。
ゆっくりとした決まった動作で受け取る場合は撮影ポイントがたくさんあり撮影しやすいです。
素早く受け取る場合は撮影漏れがないよう注意しながら素早く撮影します。
園児が証書を受け取る際に先生を見つめる瞬間があれば印象的なシーンを撮影できます。園によっては園児が先生を見つめるまで園長先生が証書を持つ手を離さず、小さな声で「先生を見てっ!」とその場で園児に伝えてくれる園もあります。
- お花やマイクが園児の顔にかからないか
もし、カメラマン立ち位置側にマイクがある場合、カメラマンとは反対側へのマイク移動をお願いします。
- 証書を渡す先生を画角に含めるか/園児の顔アップを狙うか
実際に園長先生に証書を渡す動作をしてもらい園児と先生との距離感も確認しておきます。
園児の顔アップのみ(園長先生無し)を希望する場合、園児と先生が手を伸ばしてギリギリ届くくらいの距離感がベストです。園長先生が腕を曲げて証書を渡すくらいの距離感(園児と園長先生が近い場合、演台の奥行きが狭い場合)は、撮影位置によっては園長先生が頭を下げたときに、園長先生の頭の一部が不自然に写真に入り込みます。実際にテスト写真を撮影して写真の構図を先生に見てもらいます。
- 園児が証書を保護者に渡す動作があるかどうか
- 授与の瞬間を撮影する写真の背景に、余分なもの(ティッシュの箱やゴミ箱など)が写り込まないか
- 授与シーン撮影時の明るさ
暗くて園児の顔が撮影しづらい場合は、フラッシュ利用の可否や、(近くに窓がありカーテンが閉まっている場合は)園児の顔が明るくなるように窓のカーテンを開けられるかなどを調整します。
- 補助の先生が居るかどうか、補助の先生の立ち位置
園によっては、補助の先生が園長先生の横に立ち、次の園児の証書補助の先生が園長先生に手渡す、という場合もあります。その場合、補助の先生で園児の顔や園長先生が隠れてしまうことが無いか、確認します。場合によっては、カメラマンが補助の先生の反対側から立つなど、カメラマン立ち位置の調整を行います。
マイクや装飾が画角の邪魔になる場合は、先生に相談して位置の変更をお願いすることも可能です。
機材トラブル時に備えた「予備機材の置き場」を確認
卒園式は一発勝負。
機材トラブルが発生した場合、すぐに予備機材へ切り替えられる準備が必要です。
会場内で予備カメラを安全かつ迅速に手が届く場所に置けるか。
カメラに(保護者のカメラにも)写り込まない場所、移動導線を邪魔しない位置に確保できるか。
これを事前に先生と相談し、許可を得ておくことで、緊急時のリカバリーがスムーズになります。
授与シーン撮影時の予備機材は、演台の下やカメラマン立ち位置側の(目立たない)壁際に置くことが多いです。
集合写真の撮影タイミング・撮影パターンの確認
集合写真は、卒園式の記録として欠かせないカットです。
ただし園によって撮影のタイミングや撮影パターンにバリエーションがあります。
主に確認すべき内容:撮影のタイミング:式典前に撮影するか、式典後に撮影するか
撮影場所:屋外か屋内(卒園式会場・クラス)か、背景はどこにするか
撮影パターン:園児のみ、園児+先生、園児+先生+保護者も入れるか
園児の集中力や式の進行状況も考慮して、ベストなタイミングを一緒に考えることが大切です。
卒園式終了後に室内で集合写真を撮影する場合は、集合写真撮影で使用する三脚を会場からアクセスの良い場所(室内の倉庫の中、カーテンの後ろ、廊下など、写真に写り込まず、式の進行の邪魔にならない、安全な場所)に置かせていただくと集合写真撮影がスムーズに行えます。
卒園式後の謝恩会があるかどうかも確認
近年では、卒園式のあとに保護者主催の謝恩会(卒園児が先生に感謝する会)を開催するケースもあります。
- 謝恩会があるかどうか
先生にはサプライズ予定にしていて、園長先生だけが知っている場合もあります。
- 写真撮影を行っても良いか
「園主催では無いので撮影不要です」と言われることもありますが、園児たちの記念のために、できれば撮影したいものです。
- 謝恩会での撮影内容(スピーチ・プレゼント贈呈など)
一般的な謝恩会では、園児たちから先生や園に(園長先生)に記念品が贈呈されます。園へのプレゼントは絵本が定番です。先生へのプレゼントはお花、園児たちの写真やメッセージが含まれる手作りアルバム、卒園児が全員が写った集合写真が入った写真フレームなどが贈られます。
謝恩会は、保護者主催のイベントですので、詳細は保護者と打ち合わせするのが良いでしょう。
- 謝恩会の終了予定時刻
事前に撮影依頼の終了時刻がある場合は、原則、事前にいただいた撮影終了時刻までの撮影になります。
カメラマンが契約した撮影終了時刻よりも前に謝恩会が終了する場合は帰りにも看板前写真を撮影することができますが、謝恩会の終了時刻の方が遅い場合は帰りの看板前家族写真撮影はありません(朝の登園時のみの撮影になります)。
を事前に確認しておくことで、当日の撮影スケジュール全体を見通すことができます。
フラッシュ撮影の可否
園によっては、フラッシュの使用を制限している場合があります。
室内照明が暗い会場では、フラッシュが必要になることもあります。
会場のカーテンがすべて閉じられて室内が暗い場合はカーテンを開けられるかについても確認します。
ビデオ上映などを行うためにカーテンが閉じられていることもあります。その場合、ビデオ上映以外の時間はカーテンを開けていただき、窓からの自然光を取り入れることで、撮影のクオリティが大きく向上します。
式の進行も配慮しながら、フラッシュの使用可否を事前に確認しておくと良いでしょう。
【まとめ】撮影前の打ち合わせが、当日のクオリティを決める
卒園式当日は、限られた時間の中で感動の瞬間が次々と展開されます。
その一つひとつを逃さず記録するためには、事前の打ち合わせが何より重要です。
- 式の流れ
- 園児の動線
- シーン毎のカメラマンの立ち位置
- その他撮影ご希望があるか
これらを丁寧に先生とすり合わせておくことで、撮影時の判断が早くなり、写真の完成度が確実に向上します。
卒園式というかけがえのない一日を、写真というかたちで美しく残すために。
朝の打ち合わせから撮影は始まっています。
卒園式、看板前家族写真撮影のポイント
卒園式の日、園前に設置された「卒園式」の看板は、保護者にとって最も撮影を希望されるスポットです。
限られた時間で、できるだけ多くのご家族を丁寧に撮影するためには、効率的な進行と的確な構図の判断が不可欠です。
看板前写真の撮影タイミングは「登園時」と「降園時」の2回
卒園式の家族写真は主に2つのタイミングで行えます。
- 登園時(式典前)
保護者も園児も整った服装で、最も希望が集中します。看板前写真撮影のゴールデンタイムです。
- 降園時(式典後)
登園時に撮れなかった家族や、撮り直し希望のご家族に対応します。
子どもが疲れていることもあるのでテンポよく行うのがポイントです。
※登園時は、式典開始10分前を目安に撮影を終了し、撮影機材を準備しながら会場へ向かいましょう。
看板・人物・装飾の構図ポイント
- 【重要】看板の「文字が見えるように撮影」する
「卒園式」や「〇〇保育園」といった看板の文字が人物や頭で隠れないように立ち位置を調整します。
基本構図としては、家族が看板の左右に分かれて立つスタイルがおすすめです。看板が中央に入り、文字もはっきり見える構成になります。
- マスクを外してもらう
保護者がマスクをしている場合「マスクをはずせますか?」と丁寧に伝えてマスクを外してもらいましょう。「このままでいいです」と答えた場合は無理にはずしてもらわず、そのまま撮影します。
あごマスクになっている場合は、マスクを完全に取り外してもらい、マスクが写り込まないようにポケットの中に入れたりテーブルの上に置いてもらい隠してもらいましょう。
- お花の使い方で写真の印象が変わる
【おすすめの演出】看板の近くにお花がある場合、お花は人物の手前(足元)に配置しましょう。これにより、家族が花に囲まれたような優しい印象の写真になります。
看板の左右にお花が置かれている場合、看板横に立つ人物でせっかくのお花が隠れてしまいます。
- 友達同士の撮影、先生との記念ショットも提案しましょう
卒園式の記念写真撮影は、友達同士の撮影や先生との記念写真も積極的に提案しましょう。
- できれば複数パターンを撮影するのがおすすめです
卒園式の記念写真は、ご家族にとって一生に一度の大切なカットです。限られた時間の中でも、構図や距離感を変えて数パターン撮影しておくことで、後の写真選びの満足度が格段に高まります。
家族全身を含めた横位置撮影、家族全身を含めた縦位置撮影、クローズアップ撮影などの複数パターンを撮影します。
このように、同じ家族を複数の構図・距離感で撮影しておくことで、「全体の記録としての1枚」「雰囲気を伝える1枚」「表情の美しい1枚」と、異なる用途や好みに応じたセレクトが可能になります。
撮影後、保護者が「どの写真を選んでも良い」と感じられるよう、バリエーションを意識した丁寧な撮影を心がけましょう。
看板前家族写真、撮影環境の整備
保護者の荷物置き場を園に依頼して用意してもらえると、撮影が非常にスムーズになります。
小テーブルや椅子を1〜2セットでも良いので、屋外の看板近くに設置してもらえるとベストです。
保護者のスマホ・カメラへの対応
保護者から「スマホでも撮ってください」とお願いされることが多くあります。撮影業務の一貫で対応しない方針であれば、「すみません、私の方では撮影ができないんです」と丁寧に断りましょう。
園側と連携し、保護者のカメラ・スマホでの撮影担当を先生に依頼しておくとスムーズです。
特に、先生一人を看板の横に常駐してもらうとベストです。
卒園式、朝の控室、撮影ポイント
式が始まる前の“何気ないひととき”を、思い出に残る写真に。
卒園式当日の朝、式典開始前の控室は、まだ緊張が始まる前の自然な表情と、準備に追われる先生たちの姿が交錯する、大切な記録ポイントです。
この時間帯には、卒園児と先生、友達同士の関わりがもっともリラックスして表れる瞬間が詰まっています。
今回は、「控室での撮影ポイント」として、朝の撮影で押さえておきたいシーンや注意点を紹介します。
控室に卒園児が登園してくる様子
式典が始まる前、控室に登園してくる卒園児たちの様子は、家族から離れて、友達や先生と再会する喜びにあふれています。
撮影ポイント:
- 笑顔で駆け寄る様子
- 荷物を置いたあと、友達や先生に声をかける瞬間
- ちょっと照れくさそうにしている髪がセットされてスーツやドレスを着た様子
この時間は子どもたちの表情も自然で豊かです。
カメラマンは控室の隅や出入口近くから、邪魔にならない位置で自然な動きを追いかけるスタイルがベストです。
先生が卒園児の胸にコサージュつけるシーン
保育園や幼稚園によっては、卒園児の胸にコサージュやお花を先生がつけてあげることがあります。
このシーンは、先生と卒園児の関係性や、先生の愛情が写真に表れる絶好の瞬間です。
撮影の工夫:
- お花をつける手元と園児の表情の両方が写るよう、少し斜めのアングルから撮影
- 先生の優しい表情、園児のくすぐったそうな笑顔を狙う
- 園児の顔と、名前入りの名札やコサージュが見えるように構図を調整
- つける前のコサージュが並べられているショットも印象的なイメージカットになるでしょう
背景がごちゃついている場合は、絞りを開けて背景を柔らかくぼかすのもおすすめです。
友達同士で楽しんでいる様子
卒園児たちが式が始まる前に、友達同士で談笑したり、写真を撮り合ったり、遊びの延長のように過ごす姿も大切な記録です。
- 友達どうしで話している様子
- 手をつないでジャンプしている瞬間
- 室内を走り回る様子
- スーツやドレスを見せ合いながら笑う様子
こうした場面は、あとで見返すと「卒園の日の“日常”」が感じられる貴重なカットになります。
できるだけ、全体の様子がわかる引きの構図と、表情がよく分かる寄りの構図をバランスよく撮りましょう。
控室内の装飾・撮影ブースもチェック
園によっては、控室(多くは卒園児の普段使っていた保育室)に、卒園式用の装飾や撮影ブースが用意されていることもあります。
こんな場所は撮影に最適:
- 壁には「そつえん おめでとう」などのメッセージ装飾
- 手作りのフォトフレームや看板
- 桜や園児たちの作品で彩られた背景
こうしたブースでは、
- 園児1人ずつのポートレート
- 仲良しグループでの記念写真
- 先生と園児のツーショット
など、バリエーション豊かな写真を撮影します。
背景が綺麗に整っている場合は、明るめの設定でハイキーに撮ると祝福感がアップします。
撮影時の注意点と姿勢
- 園児や先生の動きを妨げない立ち位置を保つ
- 朝は保護者との別れ際など、感情が揺れる時間でもあるため、フラッシュは極力控えめに(弱めに)使用します
- 声をかけてポーズを取らせすぎず、自然な姿を撮ることを優先
【まとめ】式が始まる前の“日常”こそ、あとで大切な思い出になる
控室での撮影は、式典の厳かな雰囲気とは対照的な、園児たちの素顔や先生との日常的な関係性が写る貴重な時間です。
「登園してきた瞬間」「お花をつけてもらう瞬間」「友達と笑い合う瞬間」
これらは数年後にアルバムを見返したとき、「あのときこうだったね」と笑顔がこぼれる“宝物のような記録”になります。
プロのカメラマンとして、控室の何気ない一瞬にも温かく寄り添い、感情のこもった写真を残していきましょう。
式の始まる「10分前」には、会場へ行き撮影準備と最終確認を行います。
このタイミングで(式が始まる直前に)、カメラとフラッシュのバッテリーを交換しておくと卒園式本番撮影に安心して望めます。
開式の言葉、卒園児入場シーン撮影のポイント
卒園式の本番がいよいよ始まる「開式の言葉」そして「卒園児の入場シーン」。
この時間帯は、緊張と高揚、少しの照れ、そして成長した姿が交差する、最初のシャッターチャンスです。
さらにこの後には証書授与シーンが控えているため、カメラマンは入場と授与の両方を見据えた立ち回りが求められます。
ここでは、卒園児入場シーンを撮影する際の具体的な立ち位置や構図、注意点などを解説します。
入場シーンは式の空気を伝える大切な導入カット
入場シーンは、卒園式という一日の物語の“幕開け”にあたる場面です。
園児たちが一人ずつ真剣な表情で歩いてくる姿や、堂々と胸を張る姿は、保護者の心を打つ瞬間です。
このときの撮影では、入場の移動経路・速度・並び順・向きを事前に把握しておくことが重要です。
撮影は「証書授与の立ち位置」に近い位置から行うのが基本
卒園児入場からの後すぐに始まるのが証書授与。
そのため、カメラマンは証書授与を撮影する立ち位置に近い場所から、入場シーンの撮影を行うことが多くなります。
メリット:
- カメラマンの移動が少なく、入場後すぐに証書授与の準備に入れる
- 証書授与と同じ方向を向いて入場してくる園児の表情が連続的に撮影できる
- 式の進行を妨げずに、自然な撮影動線を確保できる
入場シーンは、正面からの撮影にこだわりすぎず、斜め前方や横からの構図でも自然な歩みや緊張した表情がよく伝わります。
状況によっては、園児が入場していくる場面を園児の真正面から撮影することもあります。
撮影構図と表情の引き出し方
- 個々の園児が歩く瞬間の表情をしっかり写すよう、1人ひとりを丁寧に撮影
- 歩くフォームや姿勢、衣装が整っているかも写るよう、全身カットも残せるとベストです
- 表情アップ→全身の引きカットの2パターンを意識しておくと、アルバムに使いやすくなります
- 背景に園児が写り込む場合や、先生が立っている場合は、絞りを開けて園児を際立たせるのも効果的です
入場時の光と撮影設定に注意
園児が歩いて来るシーンを撮影する場合は、被写体ブレを抑えるためにシャッター速度を早めに設定(1/250〜1/400)で撮影します。
絞り、ISO感度、シャッター速度は、マニュアル設定で撮影します。マニュアル露出で撮影することにより、逆光時に顔が暗くなることなく、また写真編集時に全体の露出補正をしやすくなります。
秒間5〜8コマ/秒程度の連射設定にして各ショットを2〜3連射して撮影すると園児の目つぶり対策になります。
被写体認識を人物認識(瞳AF)に対応して撮影しますが、万が一背景の、目力の強い別の人物へのフォーカスが抜けてしまう場合は被写体認識OFFで撮影します。
撮影中に、すぐに被写体認識OFFに設定できるよう事前に設定変更の準備、または、素早く設定できるようカスタムボタンやカスタムメニューに被写体認識ON/OFF設定を登録しておきます。
撮影中の所作は控えめに、式の雰囲気を壊さない
開式直後は、園内に緊張感が張り詰めています。
カメラマンがガチャガチャと動いたり、大きな音を立てることはNGです。
- 撮影時は最小限の動き
- シャッター音を静音モードやサイレントシャッターに設定
- 立ち位置を頻繁に変えない(微調整のみ)
様々な撮影バリエーションが欲しいと思っても、カメラマンが立ったり座ったりしながら撮影するのはNGです。できるだけ目立たない動きで撮影します。
- 入場シーンを園児の真正面から撮影する場合
カメラマンの後方から保護者が撮影している場合はカメラマンが保護者の邪魔にならないよう、体制を低くして(床におしりをつけて)撮影します。カメラの上部のクリップオンに大きなソフトバウンスがつけられている場合はできるだけ邪魔にならないようバウンスを横倒しして撮影したり、またはクリップオンストロをを取り外してできるだけ保護者のじゃまにならないように撮影します。
特に保護者がカメラマンを見ている可能性が高いので、所作そのものが信頼に直結します。
【まとめ】開式から証書授与へとつなぐ“流れの中”で撮る
卒園式の入場シーンは、園児の緊張と自信が混じった大切なスタートの瞬間です。
その空気を壊さずに、かつ確実に記録するためには、
- 証書授与の動線を意識した立ち位置の選定
- 控えめで丁寧な所作
- 構図と設定の柔軟な対応力
が求められます。
入場から証書授与までの一連の流れを無理なく、自然に、連続的に記録することが、プロとしての価値を生むのです。
【最重要】証書授与シーンの撮影方法
卒園式の中でもっとも重要な撮影ポイントが「卒園証書授与」です。
園児が証書を両手で受け取る姿は、保護者にとって感無量の瞬間。
しかしその瞬間、園児は壇上に向かっており、保護者席からは表情が見えないのが一般的です。
この瞬間を表情ごと記録できるのは、カメラマンだけです。
だからこそ、プロのカメラマンには、一人も漏らさず、丁寧に記録する責任があります。
ここでは、証書授与シーンを成功させるための事前準備・撮影設定・対応策を詳しく解説します。
朝の打ち合わせで「証書授与の流れ」を確認する
式典当日の朝、必ず先生との打ち合わせで次のポイントを確認します。
- 園児の名前を呼ばれるタイミングや順番。
- 証書を受け取る際の動線と立ち位置
- 受け取った証書の扱い(保護者に渡す・先生に渡す・席に持ち帰る)
- 保護者に渡す場合:どの場所で、どの方向に向いて渡すか
この確認によって、撮影位置の最適化や、構図の選定が事前に可能になります。
証書授与ーンの撮影ポイントとおすすめ構図
撮影すべき具体的なシーンと、そのねらいどころは以下の通りです。
- 園児が呼ばれて「はいっ!」と手を挙げる瞬間
⇒ 表情が豊かで、感情が最もあふれる一瞬。押さえておきたいカットですが、カメラマン立ち位置と卒園児の座席の方向によっては(中央の花道に向かって対面に座る配置の場合、など)カメラマンから園児の表情が見えない場合もあります。
- 証書授与場所まで歩いてくる様子
⇒ 余裕があれば、歩いてくる様子を斜め前から撮影します。
- 【重要】証書授与を待っている様子
- 【最重要】証書を両手で受け取る瞬間
⇒ この瞬間が最大の撮影ポイント。園児の顔と手元がしっかり入る構図を意識します。
園児の顔のみを撮影するか、園長先生を含めて撮影するかは朝の打ち合わせで先生と事前打ち合わせを行います。
- 【重要】園長先生を見つめる様子
⇒ 証書を受け取る瞬間の「目線」「表情」は、保護者が最も見たいシーンです。
- 証書を受け取ったあとの動作
保護者に手渡す:
⇒ 保護者とのやり取りのシーンが心温まる写真になります。
⇒ 保護者と向かい合う位置、カメラマンからの角度を確認。
先生に渡す/自席に戻る:
⇒ 戻る背中、満足げな表情、堂々と歩く姿も印象的なカットになります。朝の打ち合わせで「証書授与の流れ」を確認します。
将来の夢を話す:
⇒ 証書授与後に回れ右して「大人になったら**になりたいです!」と発表するパターンもあります。
カメラマン立ち位置から撮影すると園児の後ろ姿になってしまいますが、園児の前に移動せず、後ろ姿や、全体の雰囲気を撮影します。
証書を受け取った後の動作と撮影方法、構図などについて、朝の打ち合わせで先生としっかりと打ち合わせを行います。
園児が呼名されて、授与、席に戻るまでの一連のシーンをテンポ良く撮影します。
証書授与の瞬間の前後のシーンも撮影することにより、「証書授与シーンの写真が1枚も無い」というリスクを軽減します。
撮影設定・カメラ機材について
■証書授与シーンを撮影するおすすめ機材:
- 【メイン機材】Nikonユーザー:NIKKOR Z 24-120mm f/4
- 【メイン機材】Canon / SONYユーザー:24-105mm f/4
- 【サブ機材】70-200mm f/2.8
- 【予備機材】別カメラ+標準ズーム
メイン機材は24mmの広角から120(105)mmの中望遠まで対応し、カメラを持ち替えずに柔軟な構図バリエーションを撮影できるのが特徴です。
サブ機材で望遠レンズを使った撮影を行うこともあります。
メイン機材にトラブルが発生した時のために、すぐに持ち替えできる場所に予備機材を置いておきます。
■撮影設定(目安):
- マニュアル露出で撮影します
- シャッター速度:1/200秒(ハイスピードシンクロを避ける)
- 絞り:f/5.6〜f/8
絞り開放から少し絞ることにより、ピンボケをできるだけ防ぎます。もし、わずかにピンボケした場合は、フォーカスの合っている写真を選ぶか、または現像時にシャープネス化します(「証書授与シーンの写真が1枚もない」ことを防ぎます)。
- ISO:ISO1600〜6400(会場の明るさに応じて調整)
⇒ 高ISOでノイズが気になる場合は、現像時にノイズ除去を行います。
- 【重要】RAW撮影を行います
⇒ RAWで撮影、またはRAW+JPG撮影を行います。RAW撮影を行うことにより、万が一露出設定に失敗した場合、思ったよりも暗めの写真になってしまった場合も、撮影後の現像時に上下3段くらいの露出補正、現像時の色温度補正を行うことができます。
■フォーカス設定:
- フォーカスは園児の目に合わせる
- 瞳認識AFを使用する場合、背景の保護者や先生の顔に誤認識してしまうことがあります
⇒ その際、即座に瞳認識機能をOFFに切り替えられるよう、ボタン設定を事前に確認しておきましょう。
- フォーカスの不安定な環境では、スポットAFや3Dトラッキング設定(ニコン機の場合)などで正確に目を狙う方法も有効です
■フラッシュの設定:
- フラッシュを使って良いかどうかは朝の打ち合わせで先生に確認します
- 使用する場合はフラッシュの光量を「マニュアル発光」で弱めに設定します
⇒ フラッシュの光量設定は 1/128〜1/32程度の光量で良いでしょう。朝の打ち合わせの際にテスト撮影を行い明るさ確認を行っておきます。
- 長時間の連続使用でフラシュがオーバーヒートしないように、発光量は最小限に抑えるのがコツ
■連写で目つぶり対策を行います:
- 証書授与の瞬間などの重要なシーンは、秒間5〜8コマの速度で2〜3枚程度連写を推奨
- シャッターのタイミングに不安がある場面では、細かく複数の連写を使ってベストショットを確保します
【重要】撮り漏れが発生した場合は、当日の再撮影をお願いする
万が一、撮影設定ミスや不意の動きで一部の園児の証書授与の瞬間を撮り逃した場合は:
- すぐに担当の先生に報告し、
- 式中であれば、直後の時間に再現撮影が可能か相談
- 卒園式終了後に再撮影を依頼することも検討
大切なのは、「その園児の写真が1枚もない」という事態を確実に防ぐことです。
そのためにも、受け取り前後の複数カットを撮影しておくのが安心です。
【まとめ】表情と感情を、正確に美しく残す
卒園証書授与は、園児にとっても保護者にとっても、人生で一度きりの晴れ舞台です。
カメラマンはその瞬間の表情、動作、まなざし、感情の揺れすべてを写し取る、唯一の存在です。
証書授与の瞬間、園児は保護者に背を向けているので、授与の瞬間の写真を撮影できるのはカメラマンだけなのです。
- 園児一人ひとりの流れを正確に把握し
- 設定を的確に整え
- 柔軟に構図を調整し
- 静かに、でも確実にシャッターを切る
- 証書授与の瞬間を、一人ももれなく撮影する【最重要】
この積み重ねが、保護者にとって一生の宝物となる一枚へとつながります。
細部にまで気を配った撮影で、卒園式の感動を写真に閉じ込めましょう。
記念品贈呈シーンの撮影方法
卒園式の中で、「記念品授与」が行われる場合があります。
記念品贈呈は、園⇒園児代表へ、または、逆の園児代表(または保護者)⇒園への2つのパターンがあります。
卒園式の中ではなく、謝恩会で記念品贈呈が行われる場合もあります。
園児にとっては“もらう喜び”・“送る喜び”、園にとっては“受け取る感謝”が交錯する温かな場面です。
ここでは、記念品授与シーンを撮影する際に確認しておきたい流れや構図、撮影時の注意点をまとめます。
朝の先生との打ち合わせで「記念品授与の流れ」を確認
式典当日の朝、先生との打ち合わせの中で記念品授与の流れを確認します。
- 記念品授与のタイミング(式中のどこで行うか)
- 誰が誰に手渡すのか(園児 → 園、園 → 園児、保護者代表が登壇するかなど)
- 登壇人数(1名か複数名か)
- 立ち位置・向く方向・手渡しの場所
- 授与後に一言メッセージや挨拶があるかどうか
事前にこれらを確認しておくことで、立ち位置や構図を明確に決められ、撮り逃しを防ぐことができます。
記念品授与の主な2パターン
■パターン①:園から園児へ記念品を贈呈
例:鉛筆、クレヨン、アルバムなど
⇒ 園長先生から代表園児卒園児(1〜数名)に記念品を授与するスタイル
撮影ポイント:
証書授与シーンと同様に、
- 園児が記念品を両手で受け取る瞬間
- 記念品を見つめる表情
- 先生と視線を交わす場面
- 引きカットと寄りカットをセットで撮影
園児の表情がしっかり見えるよう、園児の前方~斜め前からの位置で撮影を行います。
シャッターチャンスは一瞬なので、目つぶり防止のため、各シーンを数ショットずつ撮影します。
■ パターン②:園児(または保護者代表)から園へ記念品を贈呈
例:絵本、クラス名プレート、手作りの帽子入れ、マイクセットなど
⇒ 園児代表または保護者が、園長先生に記念品・または記念品の目録をを手渡します。
撮影ポイント:
- 記念品を手に持っている様子
- 手渡しの瞬間(お辞儀や笑顔)
- 園児代表のスピーチがあれば、発言している表情のアップも重要
- 園児⇒園長先生の視線のやり取りを意識した構図
この場面でも、主役はあくまでも(先生ではなく)園児です。
園児の顔がよく見える方向から構図を組み立てましょう。
撮影の構図と表現の工夫
- 園児の正面/斜め前からのアングルを基本に構成
- 記念品の手元が写る構図も意識(小道具のディテールも思い出の一部)
- 引きと寄りの組み合わせで、全体の流れと感情を両方伝える
- 周囲の拍手や見守る表情を背景に入れると、式全体の空気感が出ます
撮影時の注意点
- 園児の視線を妨げないよう、式進行の妨げにならない立ち位置を保つ
- 会場によっては照明が暗いことも多いため、ISOやシャッタースピードの設定を柔軟に調整
- 先生や園児の表情がしっかり写るよう、顔が隠れる角度や重なりに注意
ユニークな卒園記念品を紹介
今までたくさんの卒園式・謝恩会を撮影してきた中で、ユニークな園児からの記念品贈呈シーンを紹介します。
- 3月で退任する園長先生へ、園児から卒園証書を授与
⇒ 園長先生:「今まで**年間勤めてきた中で、何百人もの園児に卒園証書を授与してきましたが、園児から卒園証書をもらったのは生まれて初めてです」
- 卒園児一人ひとりが選んだ「絵本」を園にプレゼント
⇒ 「この絵本は僕が選んだんだよーー」と、その後の日常保育の撮影の中でも卒園児達は自慢げに教えてくれました。
- 巨大な「絵本」を園にプレゼント
⇒ 園児が両手でも抱えられないような巨大な絵本を園児から園長先生にプレゼント。こんなに大きな絵本があるのかと驚きました。
- 卒園児全員が一人3本のお花を持ち、園長先生、担任、副担任の先生へ1本ずつお花をプレゼント
⇒ 園児が一人ずつ並んで、先生に一言ずつ伝えながら一本ずつ渡して行きました。
- 退職する先生へ、「園児全員が写った集合写真」を入れた写真フレームをプレゼント
- 園児たちが園で過ごしてきたスナップ写真を使った手作り写真アルバムを担任の先生にプレゼント
⇒ アルバムには園児たちの手書きのメッセージも書いてありました。これは涙が出ますね。
- 保育室の入口に設置する手作りクラス名プレートをプレゼント
- 牛乳パックを30個くらいつなげて子どもたちが制作した手作り帽子入れ(折り紙で装飾)をプレゼント
⇒ 実用品は嬉しいですね。
(在園児による)送る言葉・歌の撮影方法
卒園式の中で、在園児から卒園児に向けた「送る言葉」や「お祝いの歌」の披露が行われることがあります。
このシーンは、在園児の純粋な言葉や歌声が会場を包み、卒園児の心に残る感動の時間となることも多い重要な場面です。
ただし、園によって構成や演出が異なるため、事前の打ち合わせと現場対応の柔軟さが求められます。
ここでは、在園児による「送る言葉・歌」のパターン別に撮影方法のポイントを解説します。
送る言葉・歌の主な3パターンと撮影方法
送る言葉・歌には、次のパターンがあります。
- パターン①:式の途中で、在園児が会場内に入場して前方で発表するケース
在園児が4歳児・3歳児などのクラス単位で会場前方に登場し、壇上や中央スペースで言葉や歌を披露します。
この場合は真正面から全体が見える位置、または、会場後方左右の邪魔にならない位置から撮影するのが理想です。
撮影ポイント:
- 在園児全体の集合感が伝わる引き構図
- 歌っている様子を数名単位で切り取ったカット
- 卒園児たちが見守る表情も忘れずに記録
- パターン②:在園児が保護者席のさらに後方に座っており、その場で立って発表するケース
発表は行われるが、舞台上には移動せず、会場後方で立ってそのまま発表するスタイルです。
この場合、撮影位置によっては在園児の顔が見えづらいため、工夫が必要です。
撮影の工夫:
- 発表場所が遠い場合は望遠レンズ(70-200mm等)で対応
- 園児椅子や二段踏み台に立って、高さを稼いだ構図を検討
- 会場の導線を塞がない場所で立ち位置を確保し、卒園児越しの構図なども効果的
- パターン③:在園児による発表がビデオメッセージとして上映されるケース
式の進行中、会場を暗くして在園児の歌や言葉をまとめた映像が上映されるスタイル。
基本的にはスライドショー撮影と同様の考え方で、上映の雰囲気を撮るのが目的です。
撮影の工夫:
- 会場が暗い場合は、ISO6400〜25600程度で撮影(写真ノイズよりも記録優先)
- 映像を見つめる卒園児の表情やシルエットを中心に記録
- 画面を見つめる卒園児の顔を望遠ズームで次々と撮影(70-200mm f/2.8、絞り開放で撮影すると印象的なショットになります)
- 撮影が不要かどうかは事前に確認を(「上映中は撮影不要です」と指示される場合も多くあります)
撮影前に必ず先生と打ち合わせを
「送る言葉・歌」のシーンは園によって扱いが異なります。
そのため、撮影当日の朝の段階で、以下の項目を必ず確認しておきましょう:
- 在園児による発表があるかどうか
- どのような形式(入場・後方発表・ビデオ)で行われるか
- カメラマンはどこから撮影するのが良いか
- (このシーンの写真が卒園児保護者に販売される前提で)在園児を撮影しても良いか
確認をとっておくことで、先生から次のようなリアクションが得られるはずです:
- 「このシーンは撮影しなくて大丈夫です」
- 「雰囲気写真だけでOKです」
- 「積極的に撮影してください!」
このやりとりにより、園の意図に沿った撮影ができ、トラブルやクレームも回避できます。
短時間で終わるからこそ「素早く、確実に」撮影する
在園児による発表は、3分〜5分程度と短時間で終了することが多く、撮り直しはききません。
そのため、
- 撮影位置の移動は最小限に
- 一瞬の表情を逃さないために秒間5〜8コマで連写
- 引き構図と寄り構図のバリエーションを即時で切り替えながら対応
が求められます。
(在園児による)送る言葉・歌、雰囲気写真のおすすめカット
在園児の発表シーンを撮影する際には、次のようなカットがあると印象的です:
- 在園児が一斉に歌っている様子(引き構図)
- 数名の在園児が真剣に話す・歌う表情(望遠レンズで寄る)
- 卒園児が涙ぐんだり、笑ったりして発表を見ている様子
背中越しに在園児と卒園児の両方を写す構図(感情のつながりを表現)
【まとめ】“つなぐ言葉と歌”を、写真でもつなげる
在園児による「送る言葉」や「お祝いの歌」は、式の中で唯一、卒園児が“受け取る側”になる特別な時間です。
この場面をしっかり記録することで、卒園児にとっても、「こんな風に見送ってもらえたんだ」という心温まる思い出になります。
- 園との打ち合わせを怠らず
- 発表形式に応じた立ち位置と撮影設定を準備し
- 短時間でも最大限のバリエーションを意識して撮影する
この丁寧なアプローチが、写真という形で「想いをつなぐ」役割を果たすのです。
(卒園児による)お別れの言葉・歌のシーンの撮影方法
卒園式のクライマックスともいえる、卒園児たちによる「お別れの言葉」や「感謝の歌」のシーン。
この場面では、園児たちが保護者に向けて感謝を伝える姿に、会場全体が感動に包まれます。
「ぼくたち」「わたしたちは」「4月から」「小学生になります」「おとうさん」「おかあさん」「いままで」「育ててくれてありがとう」「小学生になっても…」
そんな言葉がひとことずつ丁寧に語られ、歌へとつながっていくこの時間は、写真に残してこそ価値のある瞬間です。
カメラマンとしても、ファインダー越しに思わず目頭が熱くなることの多いシーンです。
撮影前に進行をしっかり確認
このシーンは演出・発表スタイルが園によって異なるため、朝の打ち合わせで進行内容と発表場所・園児の立ち位置を確認しておきます。
- 卒園児の整列場所(園児席/壇上/中央スペース)
- 移動があるかどうか
- 歌と発表の順序、曲数、時間
- 発表時のカメラマン立ち位置、カメラマン移動経路、保護者席の後方を左右に移動できるスペースがあるか
これらを事前に把握することで、撮影時の立ち位置やレンズ選び、構図の準備がスムーズになります。
撮影の基本構図とカットバリエーション
- 全景ショット
- 卒園児全体を写す引き構図
- 歌っている園児たち全員の姿が写るよう、やや高めの位置からの撮影が◎
- グループショット(数名単位)
- 縦横構図を変えながら、数名の園児をセットで切り取る
- 数名単位をランダムに撮影するのでなく、左右から、撮影対象者をずらしながらテンポ良く順番に撮影していくと、全員撮影もれなく撮影できます
- 上半身アップショット
- 感情の込もった表情や、真剣に歌う口元などをしっかり捉える
- シャッタースピードは1/200〜1/320秒程度で手振れを防ぎつつ、秒間5〜8コマで2〜3連写すると目つぶり対策にもなります
- 撮影タイミング
「に〜じのしゃべるがー(「あ」の口で開いている瞬間)、一日ぬれて〜(「え」)の口が開いている瞬間)、雨があがって〜(「え」の口が開いている瞬間)、くしゃみをひとつ〜(「う」の口が開いている瞬間」」のように、歌の区切りでタイミング良く2〜3ショットずつ人物を変えながら撮影すると歌っている表情を綺麗に撮影できます。
撮影のおすすめポジションと高さの工夫
このシーンは、保護者席の後方から撮影することが多くなります。
そのため、視界を確保するための工夫が必要です。
- 撮影ポジションのコツ
- 2段脚立や園児用の椅子の上に立って撮影することで、園児全体の表情をしっかり捉えられます
- 背後の保護者の後頭部が大きく写り込まないよう、やや高い位置からの構図を意識
- 横位置と縦位置をこまめに切り替えて、バリエーション多く撮影します
- 保護者席の後方を左右に動ける場合は、カメラマンが左右に動きながら撮影するのもおすすめです
すべての園児をまんべんなく撮影しましょう。
歌うシーンはテンポよく・連写で対応
発表や歌のシーンはテンポよく進行することが多く、撮り漏れに注意が必要です。
- 園児全員を撮影するつもりで、数名ずつ順に撮影
- 各グループを2〜3カットずつ連写して、目つぶり対策
園児をランダムに撮影するのでなく、例えば、3名グループで撮影する場合、左右のどちらかの端の3名を撮影し、一人ずつずらしながら次の3名を撮影する、を繰り返してテンポ良く撮影すると撮り漏れを防ぎやすくなります。
- 2列並び、または3列並びなどの複数列で歌う場合は
前列にフォーカスをあわせて撮影すると後列の園児にもフォーカスが合いやすくなります(後列の園児にフォーカスを合わせると前列の園児のピンボケが目立ってしまいます)。
撮影時間に余裕がある場合は、後列の園児をアップで狙い後列の園児メインでも撮影しておきます。
- グループショットメインで撮影します
時間があれば、ソロショットも狙います。
「うちの子どもの写真が一枚もない」というクレームを防ぐために、「全員を漏れなく撮影」します【重要】。
卒園児の表情を見逃さない
この場面で特に大切なのは、「表情を丁寧に残すこと」。
話す・歌う・言葉を交わす、それぞれの瞬間に見せる、感情のこもった表情が保護者の心に刺さります。
- 声を出す瞬間の口元
- 目をうるませて話す子ども
- 思わず笑顔になる場面
卒園児の“成長の証”が凝縮される瞬間を、写真という形で記録する意識を大切にしましょう。
【まとめ】感謝と旅立ちの瞬間を、美しく丁寧に記録する
卒園児によるお別れの言葉・歌のシーンは、卒園式の中でもっとも感情が揺れる瞬間の一つです。
そこに込められた子どもたちの言葉とまなざし、声、表情――それらを写真で残すことは、保護者にとって一生の宝物になります。
- 撮影前の流れ確認
- 高さや立ち位置の調整
- 表情を逃さないテンポのよい撮影
- 卒園児全員を漏れなく撮影すること
これらを押さえておくことで、感動の瞬間を確実に、心に残るかたちで届けることができるでしょう。
園生活思い出のビデオ上映シーンの撮影方法
暗い会場で“感情”を残す、雰囲気重視の記録術です。
卒園式の中盤や締めくくりとして行われることの多い、園生活の思い出を振り返るビデオ上映。
カーテンや暗幕が閉じられ、会場内は一気に暗転。スクリーンには園児の笑顔、在園児や職員からの歌やビデオメッセージが流れます。
この時間は、笑顔あり、涙ありの感情があふれるひととき。
ただし、会場内が真っ暗に近くなるため、撮影難易度は非常に高く、事前確認と柔軟な対応が求められます。
朝の打ち合わせで「撮影の要不要」を確認する
ビデオ上映は、写真撮影の対象として“必要かどうか”が園によって異なります。
そのため、式前の打ち合わせで以下のように確認しておくのが基本です:
「スライドショーのシーンは会場がかなり暗くなると思いますが、雰囲気写真を何枚か撮る程度で大丈夫でしょうか?
それともスライドの内容自体も撮影しておいた方がよいですか?」
多くの場合、以下のような返答を得られることが一般的です:
- 「はい、スライド自体は撮らなくて大丈夫ですよ。」
- 「雰囲気だけ撮ってもらえれば十分です。」
こうした確認により、無理な設定や不自然な撮影を避け、園の意向に沿った自然な記録が可能になります。
また、事前確認しておくことにより、「スライド写真を撮影して欲しかったのに写真がありませんでした」というクレームリスクを軽減できます。
撮影の基本方針:「記録」よりも「雰囲気重視」
真っ暗な会場での上映中は、スライドの内容を撮るのではなく、それを見ている園児や保護者の様子を撮ることに意味があります。
撮影の主目的:
- スクリーンを見上げる園児の真剣な表情
- 笑顔あり、涙ありの園児や保護者の自然な反応
⇒ 多くの場合、「あー、あの時こうだったー」「うゎ〜、**くんが**してる」とか思い出話に花を咲かせて園児たちは盛り上がっています。
- 会場全体の「あたたかな空気感」を切り取ること
撮影機材と設定の工夫
■撮影に最適なレンズ
- 24-120mm f/4などの(メイン機材として使用している)標準ズーム
できるだけ絞りを開放にして、ISO感度を高く設定して雰囲気写真を撮影します。
- 70-200mm f/2.8望遠ズーム
f/2.8絞り開放で撮影。前方から、園児達の表情が望遠ズームで狙って撮影すると雰囲気ある写真を撮影できます。
■ カメラ設定の目安
- ISO感度:6400〜25600(ノイズよりも記録優先)
- 絞り:開放付近
- シャッタースピード:1/125前後(被写体ブレと暗所のバランス)
- 雰囲気を壊さないよう、サイレントシャッターや静音シャッターを利用します
■ おすすめの撮影アングル
- 後方から、スクリーンを見ている会場全体の様子
⇒ タイトル画面などでスクリーンも含めながらスクリーンを見ている全体の後ろ姿の雰囲気写真も撮影しておきます。
- 前方から、広角レンズで会場全体を撮影
⇒ スクリーンを見ている園児たちの顔が明るく照らされながら園児たちが盛り上がっている様子の雰囲気写真も撮影してます。
⇒ 会場が狭くて全体が入らない場合は、もし超広角ズームをお持ちなら、14-24mm f/2.8や14-30mm f/4などの超広角ズームを使用して全体が写せるなら、なお良いです。
- メインショットは、スクリーンに近い前方サイド(壁際・窓際)から園児たちの顔が見える位置から撮影
⇒ 園児の顔がスクリーンの明かりでうっすら照らす構図がおすすめ。
⇒ 望遠ズームの f/2.8絞り開放で撮影するのでほぼ一人〜近くの数名にしかフォーカスは合わないので、撮影対象を変えながら、次々と素早く(目つぶり対策のため)2〜3ショットずつ撮影していきます。
⇒ できれば、朝の打ち合わせで実際の明るさを確認し、あまりに暗くて撮影が困難な場合は、前方のカーテンの一部を開けてもらえるようお願いし、わずかに自然光を入れれば、園児たちの顔を写しやすくなります。
⇒ 可能なら、スクリーンの後ろを通って移動し、逆サイド側からも撮影します。
撮影できる環境かの見極めも重要
会場が予想以上に暗い、またはプロジェクターの明かりすら届かない場合には、無理をせず撮影を控える判断も必要です。
その際も、事前に撮影の可否を確認していれば問題は起こりません。
また、撮影が難しい場合でも、ビデオ上映直前・直後の会場の様子を撮影しておくことで、ストーリーのつながりを補完できます。
【まとめ】“暗いから撮らない”ではなく、“どう残すか”の視点で
ビデオ上映シーンは、撮影条件が厳しいため“記録しにくい”とされがちですが、その分、静かに流れる感情をそっと写すチャンスでもあります。
- 園の意向を事前に確認すること
- 無理な記録ではなく、雰囲気を切り取る姿勢
- 高感度+明るいレンズの運用による柔軟な対応
これらを意識することで、式の感動をつなぐワンシーンとして価値ある一枚が残せるでしょう。
卒園児退場シーンの撮影方法
卒園式の締めくくりとなる「退場シーン」。
この瞬間は、園児たちにとっては式典からの“旅立ちの一歩”であり、保護者にとっては子どもと一緒に歩く最初の卒業の道でもあります。
証書授与や入場と同様に、この退場シーンも感情が最もあふれる場面のひとつです。
本記事では、卒園児の退場シーンを撮影する際のパターン別の流れや立ち位置、構図、声がけ撮影の方法などを具体的に解説します。
卒園児退場シーンには2つのパターンがあります
- パターン①:園児だけが退場するケース
園児が一人ずつ、または列をなして退場していく形式です。
この場合は、堂々と歩く園児の成長した姿をしっかり記録することがポイントになります。
- 顔がしっかり写る角度(斜め前〜正面)から撮影します。
- 背中側・横顔なども組み合わせて、歩いている様子を自然に表現。
- 退場の動線に合わせて、園児が通過する位置に先回りすることも検討します。
- パターン②:園児と保護者が一緒に退場するケース
最近増えているのが、園児と保護者が手をつないで一緒に花道を歩いて退場するパターンです。
この場合、親子のつながりと温かい表情を同時に収めることが求められます。
主な流れとポイント:
- 親子で並んで歩く姿を、正面から美しく構図に収める
- 親が子どもに視線を向ける瞬間や、歩幅を合わせる姿もシャッターチャンス
- 会場によっては「途中で立ち止まってカメラマンが家族写真を撮影します」とアナウンスされるケースもあるため、事前に園と打ち合わせしておくことが重要です
花道の方向と撮影構図の工夫
会場の構造や演出によって、退場時の歩く方向が変わります。それぞれに合った撮影方法を工夫しましょう。
- 前方(演台側)→ 後方に退場する場合
- カメラマンは後方から正面を向く構図で待ち構えるのが基本
- 背景に「そつえんおめでとう」などの壁装飾がある場合、正面からの構図が最も美しくなります
- 歩いてくる親子を連写しながら、数歩ごとの自然な表情を撮影
- 後方 → 前方(演台側)に退場する場合
- 撮影者が演台側に移動し、退場してくる親子の方向を受け止める構図を作ります
- 最後に演台近くで立ち止まってもらい、背景装飾を活かした家族写真を撮影
家族写真を撮影する場合のテクニックと配慮
園によっては、退場中に親子が立ち止まり、その場でカメラマンが記念写真を撮影する演出が組まれることもあります。
撮影の流れ:
- あらかじめ先生と打ち合わせし、撮影タイミングを知らせる声がけの可否を確認
- 声がけが可能な場合は、「3、2、1、はいっ!<カシャ><カシャ><カシャ>」や、「せ〜のっ!<カシャ><カシャ><カシャ>」と合図して2~3枚ずつ、2回ほど繰り返し撮影
- 声がけ、連続撮影は目つぶり防止にも効果的。保護者にとっても安心感があり、表情も作りやすくなります
卒園児退場シーン、撮影時の注意点
- 会場の出入り口に近いため、背景にドアや人の出入りが写り込まないよう注意
- 歩くシーンを撮影する場合
被写体ブレを防ぐためにシャッター速度は1/400以上の高速シャッターがおすすめです。
- 立ち止まって家族写真撮影する際は
家族写真撮影と同様に、シャッター速度は1/200などのハイスピードシンクロにならない速度、絞りは親子全員にフォーカスが合うよう、f/8程度まで絞り込んで撮影することがおすすめです。
f/8まで絞り込みを行うので、フラッシュの光量は、授与シーン撮影よりも強い光量になります。
- 歩くシーンと立ち止まって撮影する家族写真とで
シャッター速度などの撮影設定が異なりますので、素早い設定変更が難しい場合は、授与シーン撮影のために準備しておいた予備カメラ(標準ズーム付き)も活用できるなら活用します。
家族写真撮影時はカメラとの距離が近い場合、園児目線の低い位置から撮影すると保護者様が下から見上げる形の写真になり二重顎が目立ったり顔が歪んで写ったりするので、可能なら、ある程度の撮影距離を取って撮影するのがおすすめです。
家族が近い位置で、広角レンズで撮影する場合は、家族の顔が写真の中央位置にくるようにすると顔の歪みが少なく写せます。
- 撮影後の親子の動線をふさがないよう、撮影位置を調整します
- 親子が花道を歩いて退場する場合
花道が狭い場合は、両側の保護者席に座っている別の保護者が不自然に写り込む場合があり、その場合は、縦位置撮影するなど構図を調整しましょう。
- 次々と親子が退場してくるので
撮影もれや設定間違いに注意しながら撮影を行います。朝の打ち合わせの際に、実際に親子が退場するシーンをシミュレーションしながらテスト撮影を行っておけば安心です。
- もし退場時点で両親が揃って居ない場合
例えば、全員が退場し終わった後に父親が遅れて会場に到着した場合は、親子全員で退場するシーンの再撮影を提案してみましょう【おすすめ】。
【まとめ】「歩み」そのものが思い出になります
退場シーンは、卒園式のフィナーレであり、これまでの歩みとこれからの未来を象徴する瞬間です。
園児一人ひとりが自分の足で歩く姿、保護者と手を取り合って歩く姿には、言葉では伝えきれない感情が宿っています。
退場シーンでは、園児も保護者も笑顔が溢れ、本当に良い表情を見せてくれます。
- 会場の構造と動線を正しく理解し
- 撮影位置と背景を活かし
- 声がけやタイミングも含めて、安心感のある撮影を心がける
その積み重ねが、「歩いて退場する」だけではない、記憶に残る一枚の写真を生み出します。
卒園式(保育園・幼稚園)、集合写真の撮影方法
次のような場所で撮影することが多いです。
- 「卒園式開始前」の会場で、「そつえんおめでとう」などの壁装飾をバックに撮影
- 「卒園式終了後」の会場で、「そつえんおめでとう」などの壁装飾をバックに撮影
- 「卒園式終了後」に、屋外(園庭)で撮影
- クラス数が多い場合は、「卒園式開始前に各クラス」で園児が揃ったクラスから撮影
いずれも、「園児+先生(担任+園長、副担任)」「園長+先生+保護者(各家庭 1 or 2名 or それ以上」で撮影するパターンもあります。
集合写真の撮影方法については、集合写真の撮影方法の記事をご覧ください。
卒園式(保育園・幼稚園)特有の集合写真撮影ノウハウ
卒園式会場で撮影する場合、会場中央の花道の床などに飾られているお花の装飾や鉢植えを、集合撮影する園児の最前列前の足元に横一直線で並べると早やかな印象になります。
集合写真撮影時に、園児の胸にコサージュが付いている場合は、全員にちゃんと付いているか、斜めになっていないかなどを確認します。
スーツやドレスを着ている場合は、ボタンの掛け違いがないか、服装が乱れていないかを確認します。
撮影写真に全員の顔が写っている(前の人で顔が隠れていない)ことを必ず確認します。
よりフォーマルな印象に撮影したい場合は、
- 最前列の男子・男性は(先生も)、手を軽くグーにして膝の上に置く
- 最前列の女子・女性(先生も)は、左手を上に手を重ねて膝の上に置く
- 2列目以降は、手を横に「気をつけ、ピー!」
- 背筋ピーン
- 2列目以降は、前の人の(真後ろでなく)間に立つ
で撮影すると美しい写真に仕上がります。
その他、イメージカット撮影もおすすめです
「空気」や「思い出」を伝える写真を残すために。
卒園式当日、式典中や証書授与などの主要シーンをしっかり撮影することはもちろん大切ですが、その日その場所でしか残せない“空気感”を伝えるイメージカットの存在も、保護者にとても喜ばれるポイントです。
式が始まる前の時間、園児が登園してくる前の静かな園内には、卒園の日の特別な雰囲気を感じさせるシャッターチャンスがたくさんあります。
この記事では、卒園式当日に撮影しておきたい「イメージカット」の種類と、それぞれの撮影のコツをまとめます。
朝、卒園児が登園してくる前に、次のようなイメージカットを撮影しておくと喜ばれます。
園の入口や園名看板、卒園式看板
まずは園の外観や園名の入った看板を撮影しておくと、卒園アルバムやスライドショーの冒頭を飾る素材として重宝されます。
撮影のポイント:
- 園名看板単体ではなく、建物や季節の風景(桜や青空など)と一緒に写すと雰囲気アップ
- 朝の光が柔らかい時間帯に撮るのがベスト
- 名前の文字がはっきり読めるよう、水平・正面からの撮影を意識
- 卒園式の看板が既に屋外に出ている場合は写真全体に真正面から看板を撮影します
園庭・遊具類
卒園児たちが日々過ごした園庭や遊具は、園での生活の象徴でもあります。
静かな園庭を写しておくことで、「あの場所で遊んだなぁ」と子どもたちが思い出を振り返る材料になります。
撮影のポイント:
- まずは園庭の全景を
正面、斜めから撮影します。
- ブランコ、すべり台、鉄棒、砂場など、よく遊んでいたエリアを中心に
- 背景が明るく抜ける位置を選び、少し絞って(F8〜16.0)立体感のある描写に
- 子ども目線でローアングルから遊具を見上げる構図も◎
卒園式会場の全景
式典が行われる会場を、まだ人がいないうちに撮影しておくことはとても重要です。
このカットは、式の始まりを伝える“導入カット”として役立ちます。
撮影のポイント:
- 式次第
壁に式次第が貼られている場合は写真いっぱいに式次第を撮影します。
式次第が印刷されている場合はメモ書きの無いカラー印刷の綺麗な式次第を先生からお借りして表裏を撮影します。
- 式典会場の正面からと斜めからの引きカットを両方残す
- 園児の席、壇上、マイク、装飾などがわかるように構図を工夫
- 明るく、清潔感のある印象を与えるため、ホワイトバランスと露出に注意
壁の装飾(「そつえんおめでとう」など)
園によっては、式典のために教室や会場内の壁が特別に装飾されていることがあります。
このような“園ならでは”の装飾は、卒園アルバムや思い出ムービーで非常に喜ばれる素材です。
撮影のポイント:
- 「そつえんおめでとう」などのメッセージを正面から水平に撮る
- 装飾の質感(立体感や色合い)を活かすために、明るめ+やや斜めからの構図もおすすめ
- 複数カットを撮って、背景用や文字のアップとして使えるように
会場全景写真、装飾の写真は、先生が翌年度以降に卒園式会場を作る際に「昨年はどうだったっけ?」と参考にする際にも役立ちます。
クラスの様子・保育室の全景
卒園児たちが日々を過ごしたクラスの保育室の様子も、保護者にとってはとても貴重な思い出の一部です。
撮影のポイント:
- 園児がまだいない時間に、机・ロッカー・掲示物・制作物が整っている様子を撮影
- 広角レンズで全体を写す構図と、掲示物や写真などの寄りカットを組み合わせると◎
- 園児の荷物や名札、個人作品などが写っていると、より“その子らしさ”が伝わります
撮影エージェントや園によっては園児の名前などの個人情報が写る写真の撮影はNGの場合もあるので事前に確認しておきます。
【まとめ】「物語」を感じさせる写真を一枚でも多く
卒園式撮影というと、どうしても式典本番のシーンに目が向きがちですが、その一日を「物語」として記録するなら、始まりを感じさせるイメージカットが不可欠です。
- 看板や園庭で始まりを伝え
- 会場や教室で「日常の特別さ」を残し
- 装飾や静かな教室に「温度」や「想い」を込める
写真が語るストーリーに厚みを持たせるためにも、朝の時間帯にこそシャッターを切る価値があります。
感情に寄り添い、園の空気を感じさせる写真を意識して、卒園式の撮影をさらに豊かなものにしていきましょう。
謝恩会の撮影方法
卒園式の感動をもう一度。小さな「ありがとう」を確実に残すために。
卒園式が終わったあと、園によっては保護者主催で謝恩会やミニ謝恩会が開催されることがあります。
謝恩会とは、保護者や卒園児たちが、担任の先生や職員の方々に感謝の気持ちを伝えるために開く、あたたかくアットホームな場です。式典とはまた違った笑顔や涙があふれ、写真に残しておきたいシーンが数多くあります。
ただし、謝恩会はサプライズ的に開催されることもあり、事前の確認と当日の臨機応変な対応が非常に重要です。
卒園式開始前の先生との打ち合わせで、謝恩会の有無と撮影可否を事前確認
謝恩会は基本的に保護者が主導するため、担任の先生には内緒で進められることが多い一方で、園長先生や副園長先生はある程度内容を把握している場合があります。
そのため、卒園式開始前の先生との打ち合わせの中で、以下の2点を必ず確認しましょう。
- 謝恩会の有無
担当の先生から「無いと思います。」「例年あるみたいですが、今年はわかりません。」という回答をもらっていても、実際は「謝恩会」が行われることもあります。朝の段階で「謝恩会無し」と聞いていたのに謝恩会が始まりそうな雰囲気になったら、園長先生などの、責任者の方に「撮影の要不要、撮影可否」を確認します。
- 撮影の可否
卒園式の撮影が園からの依頼で行われている場合、「保護者主催の謝恩会」については「撮影は不要です」と先生から伝えられることもあります。
しかし、せっかくプロのカメラマンが現場にいる機会なので、もし可能なら謝恩会の様子も撮影できれば、園児たちの笑顔や感謝の気持ちがより豊かに記録として残り、後から見返した際にも園児・保護者達の大切な思い出となるはずです。
卒園式撮影の契約契約条件・撮影エージェントとの取り決めなども考慮しつつ、できれば撮影を提案してみたいものです。
また、撮影エージェント経由で卒園式の撮影に派遣されている場合、あらかじめ決められた撮影終了時刻の都合で、謝恩会の最後まで撮影できない可能性もあります。その際は、可能な範囲で対応する旨を伝え、撮り漏れのないように配慮します。
謝恩会の準備中に、保護者との軽い打ち合わせを
謝恩会の撮影を行うことが決まった場合は、謝恩会準備が始まった頃を見計らって、謝恩会主催者の保護者と軽く打ち合わせを行いましょう。
- 謝恩会全体の流れの確認
- 園児から先生へのプレゼント贈呈があるかどうか
- プレゼントを渡す際の園児の動線や向く方向
- その他、特別な撮影希望や注意点があるかどうか
園児から先生へプレゼントを渡す場面などでは、園児の顔が見える方向から撮影するための立ち位置や角度の調整がとても重要になります。
事前に簡単な打ち合わせをしておくことで、慌てることなく確実にシャッターチャンスを押さえることができます。
謝恩会の主な内容と撮影ポイント
謝恩会には園や保護者によってさまざまなスタイルがありますが、よくある内容とその撮影ポイントは以下の通りです。
- 卒園児・保護者から園への記念品贈呈
園児代表・保護者代表が、園長先生に記念品を手渡します。
絵本、手作りグッズ、大きな(マイクとアンプセットなど)商品の「目録」などが贈られることが多く、記念品がよく見える角度と表情のある瞬間を逃さず撮影します。
- 卒園児から先生へのプレゼント贈呈
花束やお花、色紙、手作り写真アルバムなど、感謝の気持ちがこもった贈り物が多く、感動的なシーンが生まれやすい場面です。
園児が手渡す瞬間は園児の表情をメインで撮影しつつ、先生のリアクションなど、一連の流れを連続で撮影しましょう。
- 卒園児による歌やダンスの披露
小グループまたは全体で、感謝を込めた歌やダンスを披露する場合もあります。
スペースが限られていても、表情と動きが両方見える位置から撮影することで臨場感が生まれます。
- その他サプライズ
3月で退任する園長先生を胴上げ、園児から退任する園長先生へ「卒園証書」授与などのサプライズなど。
保護者と事前打ち合わせを行うことにより、サプライズの決定的瞬間もカメラに納めることができるでしょう。
謝恩会、撮影時の心がけと注意点
- 謝恩会はあくまで感謝の気持ちを伝える「場」。進行の妨げにならないよう、(卒園式の撮影と同様に)目立たず静かな動きでの撮影を心がけましょう。
- サプライズ演出を壊さないよう、音や動作には細心の注意を。
- 会場が狭い場合や参加者が多い場合は、高さを確保(踏み台や椅子を使用)して見通しのよいアングルを作ります。
- 撮影後のデータ整理時に「謝恩会」フォルダを分けておくと、納品時や写真販売時に便利です。
【まとめ】小さな“ありがとう”を、忘れられない記録に
謝恩会は、卒園式本番とはまた違った、素の表情や心の交流が見える大切な時間です。
プレゼントを手渡す瞬間、言葉にならない涙、思わず笑顔がこぼれる園児や先生の姿——それらは写真として残すことで、保護者や先生にとって一生の宝物になります。
事前の確認と現場での柔軟な対応、そして感情の機微を丁寧に写し取ること。
それが、カメラマンとしてこの場面を記録する最大の使命です。
卒園式(保育園・幼稚園)撮影時のカメラマンの服装
入園式、卒園式などの式典撮影の際は、カメラマンの服装は黒・紺などのダーク系を基調としたジャケット・スーツが基本です。
式典撮影は、フォーマルで清潔感のある服装・髪型が求められます。
ピアスなどのアクセサリーは、子どもの誤飲防止のために外しておきます。
卒園式(保育園・幼稚園)の撮影方法のまとめ
卒園式は、写真でしか残せない「感情の瞬間」が詰まった一日です。
プロカメラマンに求められるのは、流れを読む力、立ち回りの柔軟さ、そして“静かな情熱”です。
各シーンごとの役割と撮影テクニックを事前に確認しておくことで、当日は安心して撮影に集中でき、結果的に保護者にも、園にも喜ばれる写真が残せます。
ぜひ各記事を活用し、卒園式撮影のクオリティ向上にお役立てください。
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